「それがフランス料理もイタリア料理も点化して、料理の品数も増え、おまかせの懐石に変わりました。この15年で急速にグローバル化し、世界の料理が懐石化したのです」
点の料理は、ある意味シンプル。このまま時代の流れにのっていけばいいのかもしれない。「でも私はそうじゃない、と思う」と奥田氏。昭和時代、親方に教わったスタイルは「もう古い」とこの十数年切り捨ててきた。だが店に若いスタッフが増え、「ちまきの巻き方も知らずに巣立つのか」と思った時、愕然とした。
「このままではこの国が何なのかわからなくなってしまう。もう一度、節句や祭りを料理にうつし、きちんと伝えるべきだと。それは和食にしかできないことです。昔は料理人も西欧の料理を学びに外に出ました。でもこれからは、日本料理やすし、そばを、外国に持って出てもらいたい。そうすることで、器や包丁、建築などの文化も運ばれます。それがこの国のすばらしさを表現する、令和の料理だと思うのです」
奥田透 おくだ・とおる
1969年静岡県生まれ。高校卒業後、静岡の割烹旅館「喜久屋」、京都「鮎の宿つたや」、徳島「青柳」を経て、1999年に静岡に和食店をオープン。2003年に銀座で「小十」を開業。2013年にパリ、2017年にはニューヨークに出店。『ミシュランガイド』で二つ星を獲得。
●銀座 小十
東京都中央区銀座5-4-8 カリオカビル4F
TEL 03-6215-9544
www.kojyu.jp
※『Nile’s NILE』2019年6月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています