三科惇 蓮
昭和の時代、実家の母の料理で茄子のはさみ揚げが好きでした。今でも賀茂なすを揚げてお出ししたりと、茄子は好きですね。それと、家の近くにあった名古屋出身の方のお蕎麦屋さんで、きしめんの味噌煮込みをしょっちゅう食べていました。味をはっきり覚えているので、今すぐ再現して作れるくらい。現代はスマホのカメラで写真を撮って残す時代ですが、本当においしいものは記憶に残る。自分もそういう料理を作りたいなと思います。
学生時代はテニス部だったので、部活帰りに横浜の家系ラーメンを食べるのも定番でした。今では食べることはほとんどないですが、豚骨のこってりとしたスープは懐かしい味です。崎陽軒のシウマイも、帰省したら必ずといっていいほど食べる故郷の味。横浜の人にとってはソウルフードといえるかもしれませんね!
平成に料理人を目指し、「石かわ」に入った時に一番おいしいと思ったのが、スッポンのお椀です。お椀だけでなく、揚げても焼いてもおいしくて、スッポンという食材の可能性に心底驚きました。おやっさんが作る鯖の棒ずしもおいしかったな。
最近では、神楽坂の「紀茂登(きもと)」さんで食べたタケノコが印象的でした。根っこのほうだけ、短時間蒸しているのですが、サクサクとした食感と自然な甘みが生きた、新鮮なタケノコならではの味わいでした。
●蓮 三科惇
三科惇さんの想う「令和の味」
日本固有の食材の多様性を追求