ハーモニーは個性をつくる

シャンパーニュ地方、フランスの歴史あるシャトー「レ・クレイエール」で活躍するフィリップ・ミル氏は、平成の終わり2017年3月に自身の名を冠する「フィリップ・ミル 東京」をオープン。「令和」を迎えた今、来日した氏に、その名にちなんだ一皿を作ってもらった。

Photo Masahiro Goda  Text Izumi Shibata

シャンパーニュ地方、フランスの歴史あるシャトー「レ・クレイエール」で活躍するフィリップ・ミル氏は、平成の終わり2017年3月に自身の名を冠する「フィリップ・ミル 東京」をオープン。「令和」を迎えた今、来日した氏に、その名にちなんだ一皿を作ってもらった。

フィリップ・ミル 東京
金目鯛とシャンピニオンのスライスを重ね、穏やかに加熱。しっとりと仕上げ、スープ・ド・ポワソンを泡立てて流す。陸と海の食材がまろやかに調和し、目にも舌にも心地よいインパクトを残す。

フィリップ・ミル氏が「令和」というテーマで紹介してくれたのは、金目鯛とシャンピニオンを重ねた料理。金目鯛の赤と白、キノコの茶色が層を作りながらしっとりと光るさまは、見るからに食欲をそそる。周りに注がれている美しい黄金色の泡は、スープ・ド・ポワソンだ。こちらには、ランスの象徴的存在であるシャンパーニュが風味づけに使用されている。そのまろやかなコクが、スープ・ド・ポワソンの力強い旨みを包み込み、優しい味わいを作り出す。金目鯛の上に散らされて輝く、金箔で包んだクルトンも印象的。この料理の第一印象をぐっと華やかに引き上げる。

「“令和”は、“美しいハーモニー”というイメージの言葉だと聞きました。これは、料理でも非常に大事な事柄。今回は、改めて食材同士のハーモニーとバランスを深く追求しています。中心に据えたのは、海と陸の食材の調和です」

金目鯛とシャンピニオンはバランスよくなじむよう同じ厚さにスライスし、生のまま重ねて、オーブンで15分ほどかけてゆっくりと加熱する。

「美しいハーモニーが目標。火入れでも食材の扱いでも、この料理では乱暴さは厳禁です」

加熱されながら互いの味が行き来し、それぞれが本来の個性を保ちながらも、新しい味が引き出される。

「私にとってのハーモニーとは、このように、一つになることで新しい個性が生まれる、ということ。そしてそれは、一つひとつの食材の個性へのリスペクトがあってこそ、成し遂げられるものなのです」

同じことが、ミル氏が率いる「レ・クレイエール」と、同店が位置するシャンパーニュ地方のランスでも行われている。2010年に総料理長に就任して以来、ミル氏は周囲の生産者たちにこまめに会いに行き、彼らとともにガストロノミーを作り上げてきた。そして2年でミシュラン二つ星を獲得、という結果も出した。生産者一人ずつをリスペクトしながら調和を作ることで、地域に新しい個性と価値をもたらす。まさに、ミル氏が料理を例に語った「ハーモニー」を、地域規模でも推し進めているのだ。

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ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
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