相模湾・乱舞する朝獲れ魚たち 小田原編

海・山・川の恵みが混じり合う相模湾。この特殊な地形こそが、相模湾に豊漁をもたらすのだ。おいしい魚を求めて、相模湾のおひざ元、小田原漁港と平塚漁港に行ってみた。

Photo Masahiro Goda  Text Junko Chiba

海・山・川の恵みが混じり合う相模湾。この特殊な地形こそが、相模湾に豊漁をもたらすのだ。おいしい魚を求めて、相模湾のおひざ元、小田原漁港と平塚漁港に行ってみた。

  • 小田原漁港小田原漁港
    セリに挑む買受人たちのまなざしは真剣そのもの。朝3時から4時に水揚げされた魚はすべて、遅くとも6時前後にはセリ落とされ、鮮魚店やスーパー、飲食店などに運ばれる。小田原漁港の水揚げ量は年間約2800トン! 市場全体での年間売上は75億円規模だ。
  • 小田原漁港小田原漁港
    小田原の海は深く、海岸近くでも漁が可能。夜中の2時から獲って、新鮮なまま港に運ばれ、早朝のセリにかけられる。そこから直送される海の幸は、近くにある漁港の駅「TOTOCO小田原」で購入可能だ。
  • 小田原漁港小田原漁港
    小田原市公設水産地方卸売市場買受人組合・組合長の古川孝昭氏。3代続く買受人で、魚國商店の社長。また小田原の魚を知り尽くしたプロとして、水産庁から「お魚かたりべ」に任命されている。YouTubeの「おだわらおさかなチャンネル」に見坊氏とともに出演中!
  • 小田原漁港
  • 小田原漁港
  • 小田原漁港

目利きが品定めをしている時は比較的穏やかな時間が流れるが、セリに入った瞬間、場の空気が張り詰める。やがてセリ人(卸業者)の声が響くと、間髪入れずに買受人たちの大きな声が乱れ飛ぶ。みんな、姿勢は前のめり。さまざまに指を立てながら、叫びながら、魚たちがどんどんセリ落とされ、“売約済み”示す紙が投げこまれる。
これは「上げゼリ」といって、値を上げながら一番高い値をつけた人がセリ落とせるという販売方式だ。指は「手やり」と呼ばれ、数字を示すのだが、例えば「同じ数字が並ぶ時は手やりを左右に振る」とか、複雑なルールがあり、ややこしい。だから一連の様子を食い入るように見ていても、そこで何が起きているのかは、まったくわからない。

確かなのは、一つの漁場のセリが「あっという間」に終わり、すぐに買受人たちが次の“セリ場”に走っていく、そのスピードと気迫が「ハンパなくすごい!」ということだけだった。

セリが終わったところで、買受人組合の組合長・古川孝昭氏に話を伺った。興奮の冷めた市場を見渡しながら、「30〜40分で売り切っちゃいますね」と笑う。「値段は一瞬で決まるから、セリ人と買受人のタイミングが合わないと買えない。慣れるまでに最低1年はかかる」そうだ。

「ここ1カ月で漁獲量がだいぶ増えてきましたね。とくにマアジは小田原の代表魚ですから、今日のように、どの漁場でも1トン、2トン獲れると市場全体が活気づきます。今は魚種が豊富な時期ですから、ほかにもワラサやブリ、カマス、トビウオ、ハナダイなど、いいものがたくさん揚がってましたよ」と相好を崩す。

氏によると近年は、温暖化の影響もあって、南方系の魚が増えているとか。「トラフグなんかも増えましたね。親潮に乗ってやって来る魚が多いようです。冬を越せるようになったんでしょう」と言う。

小田原漁港の一番の魅力は、とにかく魚種が豊富なこと。加えて、海岸近くでの定置網漁により、鮮度の高いおいしい魚が水揚げされることも大きなアドバンテージだ。

魚好きの御仁には“小田原漁港詣で”をお勧めしたい。おさかな通りに軒を連ねる鮮魚を扱う魚料理店で食事をしたり、日本初の漁港の駅「TOTOGO小田原」や、毎週土曜日に開かれる「港の朝市」で朝獲れ魚を仕入れたりと、楽しみがいっぱいだ。小田原の魚をもっと身近に感じようではないか。

小田原漁港
小田原漁港で獲れる鮮魚たち。

相模湾・乱舞する朝獲れ魚たち 小田原編
相模湾・乱舞する朝獲れ魚たち 平塚編

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。