本多さんのきゅうりの思い出といえば、お新香だという。「ソウルフードの一つですね。小さい頃、よく食べていましたので。あとは叩いてゴマをふり、梅肉を和えたり。やはり、和に持っていくイメージです」
その後フランスとイタリアへ修業に行った本多さん。きゅうりの使い方として特に印象に残ったのはガスパチョだ。きゅうり、トマト、パプリカなどの夏野菜で作るこのスープは、夏の地中海沿岸地域には欠かせない料理。にんにく、オリーブオイルとこれら夏野菜が一体化した風味は夏本番を告げる風物詩である。
変わったところでは、中国料理独特のきゅうりの使い方を今、本多さんは家での料理で取り入れているという。
「中華のシェフに教えてもらったんです。一口大に切ったきゅうりを、さっと油通しする。これを八宝菜の具の一つにしたり、酢豚に加えたり。おいしいですよ。みずみずしさが保たれ、ツルッとしている。温かいきゅうりもいいものです」
そうした思い出の中のきゅうりは、いずれも家庭料理や郷土料理と共にある。きゅうりをリストランテの料理に生かすにはどうしたらよいか? 「きゅうりは主役としては、あまり考えたことはありませんでした。困りましたよ」と本多さん。「でも取り組んでみると、意外と形になるものですね」と笑う。
今回考えてくれた3品のきゅうりの料理のうちの二つは、意外にも日本の料理からの発想だという。