京都産きゅうり

きゅうりの帽子を頭にのせた鮎の群れが泳ぎ来る―そんな光景を思わせる、愛らしく楽しい姿が印象的な一皿だ。鮎は若鮎を使い、唐揚げに。そして苦玉のある頭より少し後ろの位置に、京都のきゅうりで作る「緑酢」を丸めたものと、きゅうりの薄切りをのせる。
食べる際は、まずは頭から苦玉までを大きな一口で。緑酢と頭、苦玉が作り出す複雑な味を楽しんだあと、その余韻で腹から尾までを食べきる。
「風味や食感の強いインパクトのある頭からの一口と、穏やかな身の二口目。この二口で食べきるのが、鮎では一番おいしいと思っています。なのでこの大きさの若鮎を使いました」
京都のきゅうりは、日本を代表する軟水の影響だろうか。「はんなりとして優しい印象」と話す。
このきゅうりは、きゅうりのすりおろしと甘酢を合わせた「緑酢」に仕立て、鮎の唐揚げと合わせた。ポイントは、緑酢に木の芽、蓼(たで)をプラスしてオリジナルに仕立てる点。
「まずは頭からからかぶりついてください」
その一口で、鮎の苦みと旨みの上に、きゅうりの爽快感と青い香り、木の芽と蓼の苦みやかすかなえぐみが重なり、さらにきゅうりの薄切りの香りがかぶさる。熱々の鮎の唐揚げと冷たい緑酢、カラリとした鮎と柔らかい緑酢、パリッとしたきゅうり……さまざまな要素を込めた一口は、口の中に驚きと充実感を創出してくれる。
「一つずつの要素が、突出している。それらのバランスを取りながらまとめます」