慈華 田村亮介
ハンバーグというと、焼いて香ばしさをつけるのが定番だが、「今回はあえて焼くプロセスのないハンバーグとしました。蒸して仕上げます」と田村氏は話す。「蒸した挽き肉のなめらかな食感の中で、肉の旨みを楽しむ。そんな仕上がりを狙いました」
このハンバーグの発想の出発点となったのは、香港でポピュラーな、豚や牛の挽き肉を皿に敷いて蒸す料理だ。小皿に敷けば点心の一品になるし、大皿に敷けば大人数で取り分ける料理になる。ジューシーで柔らかい食感が特徴の、レストランでも家庭でも人気の挽き肉料理だ。
田村氏が作るハンバーグのポイントは、牛100%で旨みが特に強い肩肉を用いることが一つ。そして、生地に水をたっぷりと含ませることがもう一つだ。
牛肩肉は、可能であれば手切りにするのが望ましい。挽き肉なら、粗挽きとする。「柔らかい食感の中にも、かみ締めて『肉々しい!』という印象を作り出します」
細かく切った牛肉は塩などの調味料、卵とともにボウルに入れ、こねるようにして混ぜる。全体に粘りが出たら水を注ぎ入れるが、水の量は牛肉250gに対し100ccなので、かなりの水分が肉に加えられると言えるだろう。
そして大事なのは、水をただ入れるのではなく、細く垂らしながら混ぜ続けるようにして加えるということ。