この挽き肉に、炒めた玉ねぎ、卵、パン粉を牛乳でふやかしたつなぎなどを加えて生地とするが、今回はそこにトリュフのみじん切りもプラス。生地は成形し、フライパンで表面にしっかりと焼き色をつけながら火を入れ、その後、ソースで軽く煮込んで仕上げる。
このソースは、赤ワインソースをベースに、炒めた玉ねぎとマッシュルーム、トマトソースを加えたもの。特に赤ワインソースは手間と時間をじっくりとかけて作られている。
玉ねぎ、にんじん、セロリを甘みが出るまで炒めたところにたっぷりのポートワインを注ぎ、煮詰める。そこに赤ワインを注ぎ、再度煮詰める。さらにフォン・ド・ヴォーを加え、再々度煮詰めて漉(こ)す、という手順だ。ワインをふんだんに用い、煮詰めることで上質な酸味と凝縮感が生まれる。
これとフォン・ド・ヴォーの厚みのある旨さが渾然一体となった味わいが、赤ワインソースの持ち味となる。そして、そこに赤ワインソースとはまた異なる方向の旨みと酸味を持つトマトソースが合わさることで、味の深みと広がりが一気に増す。
「このソースは、店でも出す牛頰肉の煮込みのベースと同じ」と本多氏。旨さは折り紙付きだ。
盛り付けでは、ハンバーグにソースをたっぷりとかけ、目玉焼きをのせ、トリュフを削りかける。「ハンバーグに目玉焼き」という洋食店の懐かしいスタイルでありながら、味は洗練とインパクトのあるリストランテのもの。尾崎牛の上質で力強い香りと旨み、それと十分に釣り合う深みのあるソース、そしてトリュフの香りが混ざり合い、このうえなく贅沢な味わいを作り出す。