甘い生活

イタリア北部、ミラノとヴェネチアとの中間に位置し交通の要衝として栄えてきた古都、ヴェローナ。大きく蛇行するアディジェ川に囲まれた旧市街は中世の面影をとどめ、古代ローマ時代からの遺構も点在する。2000年にユネスコ世界遺産にも登録された街並みは、『ロミオとジュリエット』の舞台にふさわしい叙情的な空気を漂わせている。そんなヴェローナは、ジェラートの都でもあった。ジェラテリアをハシゴしながら、イタリア流“甘い生活”を味わう。

Photo Satoru Seki Text Yasushi Matsuami

イタリア北部、ミラノとヴェネチアとの中間に位置し交通の要衝として栄えてきた古都、ヴェローナ。大きく蛇行するアディジェ川に囲まれた旧市街は中世の面影をとどめ、古代ローマ時代からの遺構も点在する。2000年にユネスコ世界遺産にも登録された街並みは、『ロミオとジュリエット』の舞台にふさわしい叙情的な空気を漂わせている。そんなヴェローナは、ジェラートの都でもあった。ジェラテリアをハシゴしながら、イタリア流“甘い生活”を味わう。

ヴェネト州西部、ヴェローナ県の県都ヴェローナ。人口約25万人で、旧市街も歩いて回れる規模にまとまっている。イタリア最大の湖、ガルダ湖にも近く、夏場には湖畔への避暑客や、野外オペラの観光客でにぎわいを見せる。
ヴェネト州西部、ヴェローナ県の県都ヴェローナ。人口約25万人で、旧市街も歩いて回れる規模にまとまっている。イタリア最大の湖、ガルダ湖にも近く、夏場には湖畔への避暑客や、野外オペラの観光客でにぎわいを見せる。

「おおロミオ、あなたはなぜ、ロミオなの?」

ジュリエットの嘆きの言葉は、ウィリアム・シェークスピアのペンを通じて、時代を超え、世界中の人々のため息を誘い続けている。

街を歩けば、次々とジェラテリアに出くわす。どこに入ったらいいのか、迷ってしまうほど。どの店もビオ、つまりナチュラル、オーガニックを前面に打ち出す。
街を歩けば、次々とジェラテリアに出くわす。どこに入ったらいいのか、迷ってしまうほど。どの店もビオ、つまりナチュラル、オーガニックを前面に打ち出す。

名戯曲『ロミオとジュリエット』の舞台が、イタリアの古都、ヴェローナであったことは、広く知られている。対立するヴェローナの二つの名家、モンタギュー家の息子ロミオと、キャピュレット家の娘のジュリエットは恋に落ち、悲劇的な結末を迎える。そのジュリエットのモデルとされる女性の生家「ジュリエッタの家」は、現在もヴェローナにあり、多くの観光客を迎え入れている。ジュリエットが、冒頭に引いた言葉を発したとされるバルコニーも、そこに残されている。

古い建造物をリノベーションしながら、現在の生活シーンに合わせて利用し続けている。
古い建造物をリノベーションしながら、現在の生活シーンに合わせて利用し続けている。

シェークスピアのほとんどの作品には下敷きとなる小説や詩、伝承などがあったことが明らかにされている。『ロミオとジュリエット』にも、ヴェローナを舞台とする種本があり、当のシェークスピア本人は、この街を訪れたことはなかったという。

整然とした旧市街も、一本裏路地に足を踏み入れれば、生活感のある姿も見えてくる。
整然とした旧市街も、一本裏路地に足を踏み入れれば、生活感のある姿も見えてくる。

しかし、この地を踏めば、ここがあの悲恋の舞台にふさわしいロケーションだと感じないではいられない。中世の面影をとどめる一方、古代ローマ時代からの遺構も点在する旧市街は、どこか叙情的だ。ランドマークと言うべき円形劇場アレーナ・ディ・ヴェローナは、紀元1世紀前半の創建とされ、ローマのコロッセオよりも古い。2万席以上のキャパシティを誇り、現在も、オペラやロックコンサートが開催されている。特に毎年夏場に催される連日の野外オペラは有名で、世界中からファンを集めている。シェークスピアにあやかるなら「真夏の夜の夢」を提供し続けているといったところか。

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そんな文化の薫り高いヴェローナが、イタリアでも有数のジェラートの街であることは、日本ではあまり知られていないかもしれない。

アレーナに隣接するブラ広場周辺でも、ショッピングストリートのマッツィーニ通りでも、ここにあったかと思えば、またそこにもある、というほど多くのジェラテリアがひしめいている。

日本にも進出していたグロムや、1878年創業のチョコレートとジェラートの老舗ヴェンキなど、大手チェーン系はもちろん、このエリアだけで展開されているショップや、地域密着型の小型店など、さまざまなタイプのジェラテリアが軒を連ねる。老いも若きも、男性も女性も、ジェラートを手に歩く姿が、ヴェローナの街になじんでいるように思えてくるから不思議だ。

なぜ、ヴェローナでは、こんなにジェラートが愛されているのか? 

その疑問を、ジェラート店員やホテルのコンシェルジュにぶつけてみた。ある人は「夏場の野外オペラの時期に冷たいジェラートが欠かせないから」と言い、またある人は「この近郊に大手ジェラートメーカーの工場があったんじゃないか?」と言うが、この情報も定かではない。正直なところ、誰に聞いても明確な答えは返ってこなかった。そして異口同音に「皆、ジェラートが好きだから」である。確かに、それだけは間違いない。

イタリアでは『ガンベロ・ロッソ』というグルメガイドブックがよく知られている。イタリアにおけるミシュランガイド的な存在だが、イタリア国内では、『ガンベロ・ロッソ』のほうが信頼できるという声も多い。その版元から、なんと『ジェラテリエ・ディタリア』なるジェラテリア専門のガイドブックも刊行されているのだ。イタリア全土からえりすぐりのジェラテリアが掲載され、星ならぬコーンの数で評価されている。2019年版では全イタリアで3コーンに輝いたのは43店。こんなガイドの存在も、イタリア人のジェラート愛を証明するものだろう。

※『Nile’s NILE』2019年11月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています

ラグジュアリーとは何か?

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