豊かな海と豊饒(ほうじょう)なる大地に恵まれた南北二つの島から成るニュージーランド。この二つの島は、わずか20㎞ほどのクック海峡で隔てられている。1769年にこの海峡を発見したキャプテン・クックは、穏やかな入り江の奥まで航行し、この地に拠点を築いた。この入り江に立ち込めた朝霧を見て、キャプテン・クックはここを「クラウディー ベイ」と名付けた。
1万年前の氷河期に形成されたフィヨルドは、1702年のブレンハイムの戦いを大勝に導いたマールボロ公爵(故チャーチル首相の祖先)にちなみ、マールボロ・サウンドと命名。やがて、その風光明媚(めいび)な土地であることが知られるようになるが、世界にその名を馳(は)せたのは1980年代に入って、ワインの産地として、である。
南島の北端に位置するマールボロは、ニュージーランドで最も長い日照時間と、昼夜の寒暖差、そして海からの冷涼な風、水はけのいい土壌に恵まれた国内随一のワインの生産地だ。ここを代表するワイナリーが、日本でも知られるクラウディー ベイである。1985年の創設以来、世界的なワインコンクールでも数々の受賞歴を持つ、優れたワインを生み出し続けている。
クラウディー ベイを象徴する品種はやはり、ソーヴィニヨン ブランだ。マールボロの自然がもたらす独特の風味を持つ葡萄で造ったソーヴィニヨン ブランは、確かな存在感を放っている。さらにブリティッシュ・エアウェイズのコンコルド機内サービスで採用されるなど、高級プレミアムワインとして世界的な評価を獲得してきた。その他、シャルドネ、スパークリングワインのペロリュス ブリュット、ピノ ノワール、2000年には新たな味わいのソーヴィニヨン ブラン100%のテ ココが生み出された。
テ ココは、ソーヴィニヨン ブラン100%の白ワインだ。フレンチオークの古樽で自然発酵、2年間長期熟成させているため、ボリューム感がある。とはいえ、ソーヴィニヨン ブランらしい爽やかさも備え、トロピカルフルーツの香りと、ミネラル感が融合した余韻は、テ ココならではである。
「マールボロのテロワールを知り尽くし、それに最も適した葡萄を丁寧に育ててゆくことで、プレミアムワインが生まれる。ほどよく熟した葡萄を手摘みし、ブレンドに最適な葡萄のみを厳選している。同じ季節でも毎年の気候が違うように、その年によって葡萄の出来もワインも異なる。それがチャレンジでもあり、楽しみでもある。天の恵みを、地元の新鮮な食材と共に、友人や家族で分かち合うのは至福の喜びである」と、オーストラリアから移住した、クラウディー ベイのテクニカルディレクター、ジム・ホワイトさんは語る。彼は140 haにも及ぶ広大な葡萄畑の隅々まで知り尽くしている。
「土だけでなく、すべての環境が資産。葡萄の搾りかすや廃水などの再利用、生態系の存続のための栽植なども積極的に行っている」
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※『Nile’s NILE』2019年2月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています