ミレーとの出会い、バルビゾンの感動

名水の里・白州にて、南アルプス甲斐駒ヶ岳の伏流水で醸した銘酒「七賢」を醸造する山梨銘醸と、農民画で知られたバルビゾン派の画家、ジャン=フランソワ・ミレー。時空を超えた両者の出逢いが生んだ、大地のエネルギーを感じさせる鮮烈なスパークリング日本酒「七賢EXPRESSION 2006」を堪能したい。

Text Rie Nakajima

名水の里・白州にて、南アルプス甲斐駒ヶ岳の伏流水で醸した銘酒「七賢」を醸造する山梨銘醸と、農民画で知られたバルビゾン派の画家、ジャン=フランソワ・ミレー。時空を超えた両者の出逢いが生んだ、大地のエネルギーを感じさせる鮮烈なスパークリング日本酒「七賢EXPRESSION 2006」を堪能したい。

葛西薫・中山智裕の両氏のパッケージデザイン
山梨県立美術館とコラボレーションし、同館によるミレー作品の「超高精細画像」をもとに、グラフィックデザイナーの葛西薫・中山智裕の両氏がパッケージデザインを手掛けた。

ジャン=フランソワ・ミレーは、19世紀にフランス・ノルマンディー地方の農家に生まれた。農家といっても格式のある旧家で、父親は農業の傍ら聖歌隊の指揮をし、彫刻をたしなむ人物だった。

だからこそ、家族はミレーの才能を信じ、農業よりも美術を目指すことを勧めたのだ。その後、ミレーは奨学金を得てパリの国立美術学校に入るが、なじめずに退学している。奨学金も打ち切られ、地元で肖像画や裸婦を描いて生活した。そこで結婚したポーリーヌ・オノは貧困の中で死去。失意の末に2人目の妻、カトリーヌ・ルメールと出会うが、家族に結婚を反対されてパリに戻る。

我々が知る画家・ミレーの活躍は、その後、再びパリを離れ、バルビゾン村へ移住してから始まった。

中でも夏の終わりに麦の種をまく農民を描いた《種をまく人》は代表作の一つである。左手に種の袋を持ち、右手で種をまきながら歩く農民の姿はあまりにも力強く、堂々としていて、当時の人々に衝撃を与えた。

この《種をまく人》に、作品を収蔵する山梨県立美術館で出逢ったのが、同県白州町で300年続く老舗、山梨銘醸の醸造責任者・北原亮庫氏だ。北原氏は言う。

「ミレーの作品は華美な装飾は少なく、農村に生きる農民の現実を切り取った描写が多く、生々しい人間の息遣いが感じ取れます。特に《種をまく人》はバルビゾン村で新たな歩みを始めたミレーの意気込みや農民の収穫への期待を込めた力強さが感じられる作品です」

北原氏はミレーの作品に向き合い、その作品の躍動感あふれる生命力を酒造りに落とし込み、時とともに変化する複雑な味わいを「七賢EXPRESSION 2006」で表現した。

グラスの底から立ち上る泡
瓶内二次発酵のため、注いだ瞬間の細やかな泡に加えて、グラスの底から泡が立ち上るのが特徴的。古酒を使用していることから、レモンイエローのような色合いに。

七賢EXPRESSIONとは、1年に1度のみ造られる特別なスパークリング日本酒だ。

マグマが地下で固まってできた花崗岩が、100万年の歳月をかけて持ち上げられて生まれた甲斐駒ヶ岳に降る雪が、再び長い年月をかけて花崗岩に磨かれ、柔らかく透明感のある水を生む。この甲斐駒ヶ岳の伏流水を仕込み水に用いた七賢は、フランス料理の巨匠、アラン・デュカスと共同開発した「アラン・デュカス スパークリング サケ」を発表するなど、国内外の舌の肥えたファンから愛され続けている。

「EXPRESSION」シリーズは、その七賢で熟成管理された大吟醸古酒に、新しい息吹を吹き込む取り組みだ。

「七賢EXPRESSION 2006」は、06年に醸造された大吟醸古酒を仕込み水の一部として用い2種類の酵母を使用。穏やかで落ち着いた味わいに、洋ナシのような果実味が感じられ、古酒の特徴であるカラメルのような香ばしさも併せ持つ。

 ミレー、バルビゾン村、白州。大自然の力と、そこに息づく人の手仕事をいかに重ね合わせるかを追求しながら、ミレーの作品と七賢を楽しむ都会に住まう人のことも意識。飲んだ瞬間に、力強い野生と「白州やバルビゾン村の風景が広がってくれたら」と北原氏は話す。自然を受け入れ、たおやかに新しい一歩を踏み出す、生命の美しさを味わいたい。

●山梨銘醸 TEL0551-35-2236 

※『Nile’s NILE』2022年4月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています

ラグジュアリーとは何か?

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