2024ジュネーブ新作ハイライト

新作タイムピースのエキシビション、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2024が4月9日から15日の日程で開催された。相前後して、その他の多くのブランドが市内ホテルやアトリエなどで新作を発表。今年のハイライトとなるモデルを紹介しながら、ウォッチのトレンドや今後を占う。

Photo   Text Yasushi Matsuami

新作タイムピースのエキシビション、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2024が4月9日から15日の日程で開催された。相前後して、その他の多くのブランドが市内ホテルやアトリエなどで新作を発表。今年のハイライトとなるモデルを紹介しながら、ウォッチのトレンドや今後を占う。

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    左:IWC

    今年のIWCは「ポルトギーゼ」コレクションにフォーカス。多層ラッカー仕上げの四つの新色文字盤を用意。中でも新鮮さが印象的な「ホライゾンブルー」を、メゾンが誇るパーペチュアル・カレンダーモデルに組み合わせた。表裏両面にボックス型サファイアクリスタルを採用。「ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー44」自動巻き、ケース径44.4㎜、WGケース×カーフスキンストラップ、5気圧防水、7,106,000円。IWC 0120-05-1868

    右:JAEGER-LECOULTRE

    時分表示とそれ以外の機能をつかさどる二つのメカニズムと香箱を持つデュオメ
    トル機構をメインに、「精度のパイオニア」というテーマを具現化したジャガー・ル
    クルト。圧巻は9時位置にメゾン初の3軸トゥールビヨン、さらにパーペチュアルカ
    レンダーも備えたこの一本。「デュオメトル・ヘリオトゥールビヨン・パーペチュア
    ル」手巻き、ケース径44㎜、PGケース×アリゲーターストラップ、3気圧防水、価格
    要問い合わせ。ジャガー・ルクルト TEL 0120-79-1833
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    左:A. LANGE & SÖHNE

    「ダトグラフ」の発表25周年を祝う超複雑モデル。半透明文字盤に加え、蓄光塗料により暗所で美しく光を放つ“ルーメン”仕様。特別なモデルにのみ使用される淡い色調のハニーゴールドをケースに採用。「ダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨン・ハニーゴールド“ルーメン”」手巻き、ケース径41.5㎜、ハニーゴールドケース×アリゲーターストラップ、3気圧防水、世界限定50本、価格要問い合わせ。A.ランゲ&ゾーネ TEL 0120-23-1845

    右:VACHERON CONSTANTIN

    歴史的とも言える超複雑懐中時計や、香りをまとった女性用コンセプトウォッチをなど、伝統と革新の両面で存在感を示した新作群の中で、コレクション・エクセレンス・プラチナにも新作が仲間入りした。ケース、文字盤、ストラップのステッチにもプラチナ950を採用。モノプッシャー・クロノグラフを搭載し、3時位置に45分積算計、12時にトゥールビヨンという配置も興味深い。「トラディショナル・トゥールビヨン・クロノグラフ・コレクション・エクセレンス・プラチナ」自動巻き、ケース径42.5㎜、PTケース×アリゲーターストラップ、3気圧防水、世界限定50本、40,920,000円。ヴァシュロン・コンスタンタン TEL 0120-63-1755
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    左:BVLGARI

    2022年発表の「オクト フィニッシモ ウルトラ」からさらに0.1㎜薄型化を進め、驚異の厚さ1.7㎜を実現。改めて手巻きモデル世界最薄を樹立したが、その点よりもCOSC取得やケースバックとメインプレートにタングステンカーバイドを使用し強度を上げるなど、実用性の向上を眼目としたという。「オクト フィニッシモ ウルトラCOSC」手巻き、ケース径40㎜、チタンケース×チタンブレスレット、非防水、9月発売予定、世界限定20本、価格要問い合わせ。ブルガリ ジャパン TEL 0120-030-142

    右:VAN CLEEF & ARPELS

    メゾンが掲げる「ポエトリー オブ タイム」を表現したオートマタウォッチ。マザーオブパール文字盤上にエナメル、ジェムセッティング、ミニアチュールペインティングなどのメティエダールを駆使して描き出された、夏の朝の庭園に咲き誇る花々が、8時位置のプッシャーを押すと風にそよぎ、チョウが舞い飛ぶ。そのあまりに自然で優雅な動きは驚嘆に値する。「レディ アーペル ブリーズ デテ ウォッチ」自動巻き、ケース径38㎜、WGケース×アリゲーターストラップ、3気圧防水、10月発売予定、28,776,000円(予価)。ヴァンクリーフ&アーペル ル デスク TEL 0120-10-1906
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こうした複雑機構以上に、今回印象的だったのは意匠の進化だ。ハイエンドピースに伝統的なイメージよりも、モダンさやカジュアルなルックを与えることが、一つのトレンドとなってきている。文字盤のカラーも、これまでにない淡い色調を、多層ラッカーや手作業による凝った仕上げで実現したものが目立った。複雑機構以上に意匠へ注力する傾向は、最近注目を集めているマイクロメゾンが発信源と筆者は見ているが、その影響がビッグメゾンへ広がり始めているように思う。

充実した新作の一方で、気になる数字がある。スイスの時計輸出額は昨年3月期と比較すると約16%の下落。これには経済の失速が著しい中国と香港の影響が大きい。中国、香港ともに40%以上の落ち込み。中国への依存度を高めてきた高級時計業界は大丈夫なのだろうか?

今回ジュネーブのほか、ミラノやパリへも足を延ばし、インド系の旅行者が急増している印象を持った。14億人以上という世界一の人口を抱えるインドは、経済も上げ潮だ。人口の1%を占める超富裕層が、国内の富の約40%を所有するという。時計業界にとっても、インドへの期待は大きいはずだ。

折しも、EFTA(欧州自由貿易連合)とインドとの間で3月10日に自由貿易協定が調印され、現在時計にかかる20%の関税を毎年段階的に引き下げ、7年以内に撤廃するという。高級時計界をインドが席巻する日が近づいているのかもしれない。

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    左:PIAGET

    2018年に登場し、当時手巻きモデルの世界最薄を記録した厚さ2㎜のモデルをベースに、トゥールビヨンを搭載。時分表示をわずかにオフセットし、トゥールビヨン外周をセラミック製ボールベアリングで固定するなどの工夫により、厚さ2㎜をキープ。薄さの追求以上に、実用性を重視した。創業150周にふさわしい一本と言って差支えない。「アルティプラノ アルティメート コンセプト トゥールビヨン」手巻き、ケース径41.5㎜、ブルーPVD加工コバルト合金ケース×カーフストラップ、2気圧防水、108,240,000円。ピアジェ コンタクトセンター TEL 0120-73-1874

    右:HERMÈS

    新コレクション「エルメスカット」の発表も話題だが、やはりこの超複雑モデルのインパクトは絶大! 文字盤センターに300秒、60秒、25秒周期で回転する3軸トゥールビヨンを配置。さらにエルメスのルーツに関わる馬をかたどった6時位置のハンマーが音叉型のゴングを打ち鳴らすミニッツリピーターも搭載する。エルメスのウォッチメイキングの一つのエポックを刻むモデルと言っていい。「アルソーデュック・アトレ」手巻き、ケース径43㎜、PGケース×カーフストラップ、3気圧防水、世界限定24本、2025年夏発売予定、62,887,000円(予価)。エルメスジャポン TEL 03-3569-3300  ©Joël Von Allmen
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    左:CHANEL

    マドモアゼル シャネルと、パリのカンボン通りにあるクチュールアトリエをテーマとするオートマタウォッチ。8時位置のボタンを押すと、マドモアゼル、ハサミ、トルソーが動き、アトリエでの活気ある仕事ぶりを表現。「J12 クチュール ワークショップ オートマタ キャリバー 6」手巻き、ケース径38㎜、ブラックセラミックケース×ブラックセラミックブレスレット、5気圧防水、世界限定100本、38,720,000円。シャネル TEL 0120-525-519

    右:GUCCI

    昨年に続きレマン湖を望む壮麗なヴィラで、独自に新作を披露したグッチ。圧巻は、初となるミニッツリピーター。三つのハンマーを備え、3音階の組み合わせで時を告げるカリヨンミニッツリピーター機構が、スライダーやプッシャーではなく、回転ベゼルの操作によって作動する。6時位置にはフライングトゥールビヨンも搭載する。ハイウォッチメイキングの着実な進化を印象付けた。「GUCCI 25H ミニッツリピーター」手巻き、ケース径40㎜、WGケース×アリゲーターストラップ、2気圧防水、価格要問い合わせ。グッチ ジャパン クライアントサービス TEL 0120-99-2177
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    左:FRANCK MULLER

    2022年にアイコン的なトノウカーベックスケースを、より立体感豊かに進化させたグランドカーベックスケースを発表。これにセンタートゥールビヨンを搭載したモデルをベースに、今年はスケルトン化を実現。直径17.7㎜の大型トゥールビヨンとダイヤモンドセッティングとが相まって、大胆なラグジュアリー感を主張する。「グランド セントラル トゥールビヨン スケルトン ダイヤモンド」自動巻き、ケースサイズ53.1×36㎜、PG+ダイヤモンドケース×クロコダイルストラップ、日常生活防水、発売時期未定、44,880,000円(予価)。フランク ミュラー ウォッチランド東京 TEL 03-3549-1949

    右:HUBLOT

    アーテスト、マキシム・ビューチのタトゥースタジオ「サンブルー」とのパートナーシップは8年目を迎えた。昨年は大胆なフォルムにダイヤモンドをパヴェセッティングしたモデルが登場したが、今年はよりラグジュアリーなバゲットカットダイヤモンドを敷き詰めたタイプが登場。腕時計の常識を超えたインパクトを放っている。「スピリット オブ ビッグ・バン サンブルー ハイジュエリー キングゴールド」自動巻き、ケース径42㎜、18Kキングゴールドケース×ラバーラップ、3気圧防水、54,252,000円。LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン ウブロ TEL 03-5635-7055
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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。