銀座は、東京都内でもとりわけ特別な街である。高級ブランド店や百貨店、食通が集まる飲食店、高級クラブなど、多くの人々を魅了するコンテンツがそろっている。近年では、外国人観光客も多く訪れる世界的にも有名な街だ。
2016年の公示地価では、中央区銀座4丁目の「山野楽器銀座本店」の地価が最も高く、上位5地点のうち4地点が銀座住所と、銀座という街は地価の面においても不動の地位を築いたと言っても過言ではない。
いかにして銀座は現在のような特別な街となったのだろうか。
銀座という名は江戸幕府の銀座(銀貨鋳造所)があったことに由来している。しかし、銀座が発展していったのは、1872年起きた京橋から銀座一帯を焼き尽くした大火にあるといってもいいだろう。大火の被害から不燃都市を目指し煉瓦街が建設され、文明開化を象徴する街となっていった。その後、関東大震災や東京大空襲などの壊滅的な被害を受けるものの、その度に見事な復興を遂げ、百貨店や有名専門店が開業した。そして、1996年にティファニーが銀座2丁目へ進出し、この頃から海外の一流ブランドが進出してきたという。
銀座の表と裏にあるもの
銀座を代表する通りである中央通りや並木通りには、世界の名だたるブランド店などが立ち並ぶ。特に近年は有名建築家の設計による店舗も見られ、建物そのものがブランドのアイコンとして街を作り上げている。老舗の百貨店や専門店も多く、銀座といえば買い物というイメージが強い。
また、銀座を象徴するような「銀座・和光」などの古くからの建物が、歴史ある街としての銀座らしさを醸成している。一方、銀座界隈では2016年3月に「東急プラザ銀座」が銀座数寄屋橋に開業するなど、常に進化を遂げている街でもある。これらは銀座の表の雰囲気を感じることができる場所である。
銀座は1丁目から8丁目まであるが、表通りではない路地裏や小路では、銀座の裏と言えるような雰囲気が感じられる場所も多い。
ところ狭しと、立ち並ぶビルとビルの間には、小路が通り、隠れ家のようなバーや居酒屋、地元の人たちが立ち寄る行きつけの飲食店など、まるで昭和初期にタイムスリップしたかのような場所も点在している。
そして、銀座の表と裏は、時代とともに変化していく。2017年1月末には、「松坂屋銀座店」跡地を含む二つの街区を一体的に整備した銀座最大級の複合商業施設が開業するなど、銀座の表の姿は、かなりのスピードで移り変わっていく。銀座の裏である路地裏や小路でも再開発の動きは進みつつあり、表が変化する中にある。ただ〝銀座の裏〞は、表のように激変はしないのであろう。まるでエアスポットのような裏の空間は、銀座に存在し続けるはずだ。これもまた、特別な街・銀座の魅力なのであろう。
※『Nile’s NILE』2016年5月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています。

