時空を超える衝撃

時代を超えて愛される普遍的なスタイルを生み出し、「モードの帝王」とたたえられたイヴ・サンローランの没後初となる日本での大回顧展が開催される。日本初公開のドレスなど110体のルックのほかドローイングや写真、映像などの貴重な資料から、その類いまれな人生と世界に衝撃を与えたクリエーションの全貌に迫る。

Text Rie Nakajima

時代を超えて愛される普遍的なスタイルを生み出し、「モードの帝王」とたたえられたイヴ・サンローランの没後初となる日本での大回顧展が開催される。日本初公開のドレスなど110体のルックのほかドローイングや写真、映像などの貴重な資料から、その類いまれな人生と世界に衝撃を与えたクリエーションの全貌に迫る。

[右]1958年春夏「トラペーズ・ライン」オートクチュールコレクション [左]イヴ・サンローラン、1962年春夏オートクチュールコレクション
[右]1958年
「品行方正」シャツ・ドレス
イヴ・サンローランによるクリスチャン・ディオールの1958年春夏「トラペーズ・ライン」オートクチュールコレクション
©Yves Saint Laurent ©Alexandre Guirkinger

[左]1962年
ボーティング・アンサンブル ファースト・ピーコート
1962年春夏オートクチュールコレクション
©Yves Saint Laurent ©Alexandre Guirkinger

「イヴ・サンローラン展」、国立新美術館にて開催

1957年、21歳でディオールのチーフデザイナーに就任し、最初のコレクション「トラペーズ・ライン」で鮮烈なデビューを飾ったイヴ・サンローラン。62年からは自身のブランド「イヴ・サンローラン」の名を冠したコレクションを発表し、およそ半世紀にわたり独自の感性と創造性を遺憾なく発揮し続けた希代のデザイナーである。
その功績は、ジェンダーの枠を軽やかに飛び越え、パンツスタイルを女性のファッションに取り入れたことだろう。船乗りの作業着に着想を得たピーコートを始め、パンツスーツ、トレンチコート、タキシードなどの紳士服を美しく着心地の良いエレガントなラインに改良し、女性のスタイルに現代まで続く普遍的なモードをもたらした。

イヴ・サンローランがいなければ、現代の女性のファッションは今と同じではなかったはずである。
そんな時代を超えたアイコンがいかにして生まれ、どのようなクリエーションの軌跡をたどったのか。

イヴ・サンローラン美術館パリの全面協力を得て、2008年の没後初となる日本での大回顧展が、12月11日まで国立新美術館で開催される「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル Yves Saint Laurent, Across the Style」だ。

  • イヴ・サンローラン、1965年「バブーシュカ」ウエディング・ガウン
    1965年
    「バブーシュカ」ウエディング・ガウン
    1965年秋冬オートクチュールコレクション
    ©Yves Saint Laurent ©Alexandre Guirkinger
  • イヴ・サンローラン、1965年秋冬オートクチュールコレクション
    1965年
    カクテル・ドレス―ピート・モンドリアンへのオマージュ
    1965年秋冬オートクチュールコレクション
    ©Yves Saint Laurent ©Alexandre Guirkinger
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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。