コロナ第三波の襲来におびえる日本を、『鬼滅の刃』ブームが席巻している。NHKですらプライムタイムのニュースで取り上げるほどのブームなので、普段アニメや漫画に興味のない方も一度はタイトルを耳にしたり、キャラクターを見かけたりしたことがあるだろう。
ストーリーの骨格はシンプルで、肉親を鬼に殺された少年が、生き残ったものの鬼になった妹を人間に戻す方法を模索するため、「鬼狩り」の組織に加わり、鬼たちとの戦いに身を投じていくというもの。
鬼狩りに参加する人間たちにも、狩られる鬼たちにもそれぞれに切ないエピソードがあり、深みのある人物描写に惹かれるファンも少なくない。
原作漫画はアニメ化をきっかけに部数を伸ばし、『鉄腕アトム』(手塚治虫)に並ぶ累計発行部数1億部を記録。
『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』は公開からわずか24日間で興行収入200億円を突破。興収歴代1位の『千と千尋の神隠し』(スタジオジブリ)が59日かけて達成した数字を半分以下の日数でクリアすることとなり、興収日本一の座の奪取も視野に入ってきた。
また、テレビや街頭ではテレビアニメ・映画の主題歌が流れ、さまざまなメーカーや飲食店がコラボしたキャンペーンや商品が街中にあふれ、まさに社会現象といった盛り上がりを見せている。
なぜ、この作品がこのタイミングでこれだけのブームとなったのか。単なるヒット漫画の枠にとどまらない広がりを見せる秘密を探っていく。
『鬼滅の刃』を読み解く 目次
※『Nile’s NILE』2020年12月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています