鬼すべ神事
太宰府天満宮では正月7日、「鷽替え神事(うそかえしんじ)」が行われる。「前年にあった災厄・凶事などを嘘とし、本年は吉となる」ことを祈念して行われるものだ。
同じ日にもう一つ、「鬼すべ神事」というものがある。こちらは986年に道真の曽孫である菅原輔正(すがわらの すけまさ)によって始められた、災難消除、とりわけ火除け(ひよけ)と開運招福を祈る火祭りである。
奉仕するのは門前町六町の氏子たち約300名。警固(けいご)、燻手(すべて)、松明(たいまつ)と、各町で役割が決まっていて、それぞれが群をなして「鬼じゃ、鬼じゃ」の掛け声とともに参道を練り歩き、斎場の鬼すべ堂に集結する。
そして堂前に積まれた藁や青松葉に忌火(いみび)が点火されるや、瞬く間に炎が燃え上がる。
そこから堂に立てこもる鬼を大きなウチワで燻り出す燻手と、棒で板壁を打ち破って煙を出し鬼を守る警固との激しい攻防戦が展開する。最後は神職が卯杖(うづえ)で鬼を退散させて終わる。
「まるで鬼殺隊の炎柱(えんばしら)、煉獄杏寿郎(れんごく きょうじゅろう)がさまざまなワザを繰り出しながら、“炎の呼吸”で鬼を殲滅(せんめつ)するよう」と勝手な想像をしつつ、この神事を一度見てみたいと思った次第である。
今の時代、『鬼滅』のコミックを携えて、鬼をテーマに太宰府の旅を楽しむのも一興かなと思う。
※『Nile’s NILE』2020年12月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています