「東西を俯瞰する眼-帝国ホテルとライト- 前編」から続く
日本の迎賓館、誕生
帝国ホテルが誕生したのは、ライト館の開業より30年余りさかのぼる明治時代半ば、1890(明治23)年のことである。日本が近代化に向かってまっしぐらに進んでいた時代、海外の賓客をもてなす「日本の迎賓館」としてスタートを切った。発起人の一人は、後の初代会長、渋沢栄一。明治維新の混乱も落ち着き、「日本ももはや世界の一等国だ」との自信を深めた政官財のリーダーたちは、国の威信をかけて、この最高級ホテルをつくり上げたのだ。初代の建物は、ネオ・ルネサンス様式の木造3階建て。その堂々とした壮麗な姿を、江戸城外濠の水面に映していたという。
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ホテル内外のお客様がショッピングを楽しめるよう、19の店舗を集めた「アーケード」。
写真提供/帝国ホテル 東京
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ルーフガーデン映画会の様子。昭和初期、夏季の約2カ月間、メインダイニングに代わりライト館の屋上に登場したレストラン「ルーフガーデン」では、ゲストへのサービスとして映画会を開催。写真提供/帝国ホテル 東京
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日本の庭園を想起させるような中庭には芝生が敷かれ、季節の花々に彩られていた。
写真提供/帝国ホテル 東京
そして帝国ホテルは、隣接する鹿鳴館ともども「欧米と対等な関係を築く」という重大な使命を担ったのである。