イエス・キリスト生誕の地ベツレヘムはイスラム教徒にとっても神聖な場所だ。ベツレヘムはエルサレムの南10㎞の小高い丘にあり、ダビデの出身地であることから「ダビデの町」とも呼ばれる。
ガリラヤのナザレに住んでいたマリアとヨセフは婚約していたが、結婚前に聖霊によって懐妊が告げられる。人口登録のためにヨセフの故郷ベツレヘムに向かった二人は宿が見つからず、すでに出産の日が近づいていたマリアは馬小屋で男の子を産み、飼葉桶に寝かせ、イエスと名づけた。ベツレヘムを訪れたヘレナは、エルサレムの聖墳墓教会と同様、イエスが生まれ、かつて馬小屋だった洞窟を大聖堂の場所に選ぶ。ビザンチン様式の降誕教会は4世紀初めに完成したが529年に破壊され、東ローマ皇帝ユスティニアヌス1世の下で大規模な再建が行われ要塞化された。
主祭壇の両側から下る階段が、イエスが生まれた洞窟へと導く。銀色の星がその場所を示し、訪れた人々は競うように星にひざまずいていた。
降誕教会は、2012年にパレスチナ初の世界遺産に登録された。
天使はエジプトに逃げるようヨセフに告げる。イエス生誕の報に不安を抱いたヘロデ王がベツレヘムと周辺の男の子を残さず殺させたからだ。伝説では、ヨセフとマリアがエジプトに向かう前にヘロデ王の兵士から逃れた場所こそ大聖堂の南東に位置するミルク・グロットだとされ、岩の洞窟はマリアの乳が落ちて白くなったと伝えられている。キリスト教徒、そしてイスラム教徒からも尊敬を集める教会だ。
降誕教会が面する町の中心となるメンジャー広場からスークを抜けて進むパウロ6世通りは、店と買い物客や観光客でひしめいていた。
ベツレヘムから東へ、荒涼とした岩肌のケデロンの谷に潜む、女人禁制のマルサバ修道院を訪ねる道筋で、峠から東を望むと山越しに死海の湖面がかすかに光り、ヨルダンの山々が遠くかすんで見えた。