世界最古の城跡都市
ヨルダン川。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教と深く結びついた川である。レバノンとシリアの国境に位置するヘルモン山(標高2814m)の南東斜面に発し、ガリラヤ湖に至り、さらに激しく蛇行しながら南流して死海に注ぎ、そこで終わる425kmの内陸河川である。
死海は年間降水量が極端に少なく気温が高いため、湖水の蒸発が水の供給を上回り塩分濃度が30%を超してしまい、一部藻類を除き生物の生息に向かないことで知られている。
ヨルダン川の西、イスラエルとの間はヨルダン川西岸地区と呼ばれパレスチナ自治区の一部を形成。約270万人のパレスチナ人と入植地のユダヤ人約40万人が住む。
死海の北西約15km、ヨルダン川河岸にあるエリコは人口2万2000ほどの小さな街で、旧約聖書にも繰り返し登場し、1万年以上前にさかのぼって海抜マイナス260mの低地発展した世界最古の城塞都市テル・アス・スルタンの遺跡が残る。最も初期のナトゥーフ文化(紀元前1万~前8000年紀の亜旧石器文化)を始め、青銅器時代、古代ローマやビザンチンなどの時代の建築遺構が積み重なって4000m2を超す丘を形成している。
遺構の西には、海抜350mの山が断崖となってそびえ、むき出しの赤い山肌にキリスト教初期から修道士が住んだといういくつもの洞窟が見える。新約聖書のマタイによる福音書第4章で、キリストが40昼夜の断食と瞑想を行い悪魔に誘惑を受けたと言われる場所で「誘惑の修道院」と呼ばれている。6世紀に建てられた修道院は断崖に張り出しているため、エリコ市街とその先のヨルダン川まで見渡せ、気象条件に恵まれれば死海を望むこともできる。現在はギリシャ正教会の修道院となっていて、キリストが瞑想したという石が残る。