前編「変貌を遂げた街」から続く。
ボテロとエスコバル
花とファッション、人々が愛するサルサのリズムは、ミス・ユニバースなどに頻繁に登場する美人の里にふさわしい。
加えて、メデジンが誇るのが、現役の南米のアーティストの最高峰とされる、フェルナンド・ボテロだ。太った人物や生物を描くことで知られる芸術家は、欧米都市の随所でその彫刻が見られるようになったが、16歳までメデジンに暮らしていた。その後、誘拐を恐れてコロンビアを離れ、安全な創作活動の地を求めて欧米に移住した。
近年はパリに住み、里帰りするようになったようだ。150点以上の作品をコロンビア政府に寄贈し、2004年には都市整備が進むメデジン市の旧市街中心部に、その中のブロンズ彫像23体が置かれ、ボテロ広場と呼ばれるようになった。メデジンの日常の風景となったボテロの作品とともに、スラムにあふれるダイナミックなグラフィティもまた、ウォールアートとして近年話題を集めている。
88歳になるボテロはほっそりとした体形で、「太いものに引かれているわけではない。私は美しさの量感をとらえている」と語っている。ユーモラスで優しさのある作品だが、政治的なテーマにも取り組む。喜劇と悲劇が混在するふくよかさもまたラテンアメリカならではなのだろう。