ところが、こうした状況になっても全くもって動かない人々がいる。しかもそれだけではない。人類たるもの、基本はお互いに交わる際に感じるものをどのように感性で鋭くとらえられるのかなのであるが、こうした人々は全くもってこの意味で共鳴する能力を劣化させてしまっているのである。したがって一方では人工知能(AI)のように文句も言わず大量のパターンマッチングをするでもなく、だからといって人類同士を気持ちでつなぐという作業をすることもない。文字通り、ただただ「漂っているだけ」の存在となっている。現代の我が国に山ほどくらしているビジネスパーソンの実態とは、この意味での「人間」なのではないだろうか。
かつて現代にまでつながる人類は、その前の世代の旧人や、クロマニョン人などと同時代を生きていた時期があると聞いたことがある。そのことを思い出す度に「実は今、起きている人類の二分化とは、要するに現生人類とクロマニョン人が同時並行で生きていた時代の焼き直しなのではないか」と考えてしまう自分がいる。それくらい両者は異なるし、また明らかに「この先に待ち受けている未来」も違うように思えてならないのである。
人類に残されたものといえば、推論方式でいうならば演繹(えんえき)・帰納に加えて語られる「アブダクション(abduction)」くらいのものであろうか。これだけは人類にしか出来ないとしばしば専門家たちは語ってきている。しかしこれですら今、人工知能(AI)へと乗せ、社会実装しようと私自身、この夏にスウェーデンで開催される国際学会に向けて先般、論文を提出したところである。そしてこの論文が無事に採択され、お披露目されることになればもはやアブダクションですら、人類による独占の対象ではなくなっていくことになる。
あなたは「令和のクロマニョン人」なのか? それとも次の時代へと生き延びていく「ホモ・デウス」なのか? 今この瞬間だからこそ、問いかけるべきなのかもしれない。
原田武夫 はらだ・たけお
元キャリア外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。情報リテラシー教育を多方面に展開。2015年よりG20を支える「B20」のメンバー。
※『Nile’s NILE』2025年5月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています