本稿を執筆している段階(2024年9月末)の我が国において、街角景気は「これ以上ひどくならないで欲しい」と切に願いたいほどに冷え切ってしまっている。当局は「消費動向は上向きになっている」とアナウンスを繰り返すが、とにかく物・サービスが売れなくなっていることは明らかなのだ。確かにヒトは街にいる。しかし、ふと見ると我が国における会社倒産件数は2014年以来の高水準で推移し始めている。街角でも「For Rent」と書かれたスペースが続出している。道路脇の広告に至ってはひどいもので、代理店の社名広告ばかりが林立するようになっている。これはひどい、実にひどい状況なのだ。飲食店となるとさらにひどい状況なのであって、「飲み屋」だというのに2回転目の集客を早々に断念し、21時ごろにふらりと入店しても「すみません、閉店なんで……」と店主が謝りに出て来る店がいくつもある。他方で高級料理店についても同じなのであって、しかも往時の6掛けの来店者数しかいない店をここにきてよく見かけるようになっている。筆者の暮らす東京都心部でもそうなのであるから、地方都市であればなおのことであろうと推察する。
それではなぜ、我が国の景気は冷え込んでしまっているのだろうか?―色々な原因が語られてはいるわけだが、端的に言うと理由は一つなのである。それは世の中が国内外を問わず、とにかく「不安定」になってしまったからだ。今やありとあらゆることどもが不安定さを増してしまっている。すなわち「落としどころ」が分からなくなってしまったので、それに対峙するにはとにかく時間を稼ぎ、無駄なエネルギーを使わないというのが最適解になってしまっているのである。「消費」など最たるものなのであって、今手元にある現金(キャッシュ)は二度と戻っては来ないかもしれないのだ。そうである以上、「今買わなくていいだろう」「これはまだいいだろう」ということになり、とにかく「買わない・欲しがらない」病に我が国だけではなく、世界全体の人々がかかってしまっている。そうした中、繁栄を誇っていたはずの米国経済が一気に不安定さを増し始めており、それが証拠に米国ではいよいよ「利下げ」すら断行された。これは実に一大事だ。
「第二のミッドウェー海戦」で負けるな
時代を読む 第130回 原田武夫
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