二度の不測の事態を乗り越え開催されたONLY WATCH 2024が意味するもの

さらなる想定外の事態が開催直前に発生する。オークションの運営に携わるクリスティーズのオンラインシステムがサイバー攻撃を受け、ダウンしてしまったのである。オンラインでのビッドもできない状態に陥った。しかしそれに屈することなく5月10日、ジュネーブの展示会場パレクスポで、オークションはリアル開催され、電話を手にした顧客担当者らが熱い争奪戦を繰り広げた。

落札総額は2832万スイスフラン。日本円で約48億7000万円。さまざまなアクシデントにもかかわらず、前回の2974万スイスフランに迫る結果となった。最高落札額は、今回もやはりパテック フィリップ。スチールケースにグランド&プティットソヌリとミニット・リピーター機構を搭載した「Ref. 6301A」。手作業でギョーシェを施したブルーグリーンのフランケ七宝文字盤も見事。落札額の1570万スイスフラン(約27億430万円)と、総落札額の約6割を占める。

このほかリシャール・ミルのネックレスウォッチ「タリスマンオリジン」が238万スイスフラン(約4億1000万円)、F.P.ジュルヌの新キャリバーをタンタルケースに搭載した「クロノメーター・ブルー・フルティフ」が200万スイスフラン(約3億4400万円)の高値をつけた。

常連のメゾン加えて、レジェップ・レジェピ、ペテルマン・べダ×オフレ パリ、レジェンド時計師ドミニク・ルノー&若き鬼才ジュリアン・ティシエとコラボしたファーラン マリなどなど、進境著しいマイクロメゾン、若手辣腕(らつわん)時計師のブランドも熱い視線を集めたことは収穫というべきだろう。この傾向は、ハイエンドウォッチの分野で今後ますます進行しそうだ。

出品作を見るにつけ、クリエーティブを競うONLY WATCHのような場は刺激的で、やはり必要だと感じる。それを維持するためにも、健全な財務や透明性のある運営を望んでやまない。

それにしても、出品を取りやめたメゾンのユニークピースの行方も気になる……。

まつあみ靖 まつあみ・やすし
1963年、島根県生まれ。87年、集英社入社。週刊プレイボーイ、PLAYBOY日本版編集部を経て、92年よりフリーに。時計、ファッション、音楽、インタビューなどの記事に携わる一方、音楽活動も展開中。著者に『ウォッチコンシェルジュ・メゾンガイド』(小学館)、『スーツが100ドルで売れる理由』(中経出版)ほか。

※『Nile’s NILE』2024年6月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
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