グローバル社会というのは実に不思議なもので、一見すると「グローバル化」の名の下に全てが平準化しているかのように見えるものの、他方でそれぞれの国家・民族にはえてして普遍的な役割とでもいうべきものが割り当てられているのだ。
例えば我が国についていうと、我が国は米欧勢からいつも学び、それを吸収しながらも、他方で常に米欧勢から見ると「列の後ろ」からついてくる存在であるかのように語られることが多い。しかしその実、加速度的な少子高齢化が典型なのであるが、我が国から始まる現象はいくつもあり、それが米欧勢をも含む世界全体に伝播されていくという意味で、我が国こそが「列の先頭」に立っているというべきなのである。
このことをふと今思う時、「芦屋の賢人」の言葉として我がメンターから聞いたことを思い出した。「よいかい、ロシアこそ、我が国を動かす時、最初に動かされる存在なのだよ。他でもないロシアだ。だからロシアが何をするのかを注視しなければならない」
仮にイスラム国の名をかたってくだんの国際的なコンソーシアムがある要求の貫徹をロシアに求めていたと考えるならばどうか。プーチン露大統領は「圧倒的な勝利」を大統領選挙において飾ったにもかかわらず、真正面から冷や水を浴びせられた形になった。つまり、逆に言えば同大統領の存在などこの国際的コンソーシアムからすれば「その程度のものだ」ということなのである。それではそこで突き付けられた要求とは一体何であり、なぜロシアはこれまで躊躇してきたのか。またその結果、我が国はどのようにロシアから揺さぶりをかけられることになり、さらにはこうした国際的コンソーシアムが利を得ることになるのか。
「本当のゲーム」がいよいよ始まった。株高に沸く我が国に生きるからこそ、私たち日本人はこの「本当のゲーム」から目を離してはならない。
原田武夫 はらだ・たけお
元キャリア外交官。原田武夫国際戦略情報研究所代表(CEO)。情報リテラシー教育を多方面に展開。2015年よりG20を支える「B20」のメンバー。
※『Nile’s NILE』2024年5月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています