なおも海外勢による日本株買いは続く!?

田嶋智太郎 経済アナリスト

田嶋智太郎 経済アナリスト

いま、海外投資家の日本株に向ける目線が熱い。海外勢は年初から11月第4週までの間に日本株を現物と先物の合計で約6.5兆円も買い越しており、そのおかげで日経平均株価は11月下旬に年初来の高値(執筆時点)を更新するに至っている。

米金融大手のゴールドマン・サックスは、日・米・欧株のなかで2024年の実績が最も高く出るのは日本株であるとし、東証株価指数(TOPIX)は13%上昇すると見込んでいる。また、資産運用世界最大手の米ブラックロックは、9月に日本株の投資判断を「中立」から「オ-バーウェイト」に1段階引き上げた。米バンク・オブ・アメリカが11月に実施した機関投資家調査でも、日本株の配分について「強気」から「弱気」を差し引いた値は18年3月以来の高水準になったという。

このところ、海外勢がにわかに日本株への関心を高めているのは、一に「欧米諸国や他のアジア諸国とさまざまな面で大きく異なる」ことが大きい。何より日本はいまだ政策金利がマイナス水準のまま。世界の他の国々は22年の年初あたりから幾度も連続して政策金利の引き上げを実施してきており、この9、10月あたりからは「そろそろ利上げサイクル打ち止め」とのムードを色濃くし始めている。

それに対して日本は、いまだ「24年に入ってからようやく利上げの検討を始める可能性がある」といった段階にとどまっており、今しばらくは「超低金利の恩恵を世界で最も享受する国」であり続ける。

当然のことながら、これまで連続利上げを繰り返してきた米・欧などの国・地域では、その影響が成長鈍化や景気悪化、消費マインド低下などの形で表れはじめている。さらに、中国で不動産不況を背景として製造業の新規受注が落ち込むなど、景気の先行き不安感が台頭していることもあって、言わば消去法的に日本に目が向かっているという側面もある。

そもそも、我が国ニッポンは実にさまざまな分野において世界の主要国に出遅れてきたし、今も多くが出遅れている。換言すれば「それだけ多くの“のびしろ”を有している」ということでもあり、そこに再評価の目線が注がれ始めていることも事実であろう。

まず、コロナ禍からの“脱出”が主要各国よりも出遅れたことにより、今ごろになって経済活動再開に伴うプラスの面が鮮明になってきている。言うまでもなく、それはインバウンド需要の急回復という側面が最も顕著である。また、供給制約の解消に伴う輸出の回復や原材料価格の高騰に対応する価格転嫁の動きも大きく出遅れた。それが、多くの上場企業にとって24年3月期の通期業績予想を上方修正する動きにつながり、市場の期待も一層高まっている。

電気自動車(EV)への取り組みでも、日本は米国や中国などに大きく後れを取った。しかし、今ではより高性能かつ軽量な関連部材の開発、より高効率な生産体制の構築などの形で大きく巻き返しを図るための準備が着々と整ってきている。

総じて、日本の上場企業の今期の最終着地、そして来期の予想がますます楽しみな状況となってきている。ちなみに、執筆時点における日経平均株価構成銘柄の平均1株当たり利益(EPS)は2250円程度の予想となっており、予想株価収益率(PER)=15.5 ~ 16倍に換算すれば日経平均株価の妥当水準は3万5千~ 3万6千円ということになる。24年も日本株高となることが期待される。

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田嶋智太郎 たじま・ともたろう
金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産形成まで、幅広い範囲を分析、研究。講演会、セミナー、テレビ出演でも活躍。

※『Nile’s NILE』2024年1月号に掲載した記事をWEB用に編集し、掲載しています

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