浅岡肇は時計界のOHTANI-SANか!?

腕時計における不朽の価値とは? ミュージシャン兼ウォッチジャーナリストのまつあみ靖が、ハイウォッチメイキングの世界をナビゲートする連載第10回。独立時計師としての仕事に加え、セカンドブランドも好調、昨年11月には「現代の名工」に選出されるなど、充実の時を迎えている浅岡肇氏。新作を紹介しながら、そのウォッチメイキングの世界に迫る。

腕時計における不朽の価値とは? ミュージシャン兼ウォッチジャーナリストのまつあみ靖が、ハイウォッチメイキングの世界をナビゲートする連載第10回。独立時計師としての仕事に加え、セカンドブランドも好調、昨年11月には「現代の名工」に選出されるなど、充実の時を迎えている浅岡肇氏。新作を紹介しながら、そのウォッチメイキングの世界に迫る。

  • 「TSUNAMI」手巻き、ケース径37mm、SSケース×アリゲーターストラップ、日常生活防水「TSUNAMI」手巻き、ケース径37mm、SSケース×アリゲーターストラップ、日常生活防水
    独立時計師アカデミーの会員候補となった2013年にバーゼルで初号機を発表。大型のテンプが、ムーブメントのセンターで主張する独創性の高い設計。試行錯誤の末に完成させた、このメタリックなブラウンダイヤルも味わい深い。
    「TSUNAMI」手巻き、ケース径37mm、SSケース×アリゲーターストラップ、日常生活防水、価格要問い合わせ。
  • 「グランド漆・青山」手巻き、ケース径37mm、SSケース×レザーストラップ、3気圧防水、各100本限定、394,350円。特製桐箱に3モデルをそろえた限定88セットは977,900円。「グランド漆・青山」手巻き、ケース径37mm、SSケース×レザーストラップ、3気圧防水、各100本限定、394,350円。特製桐箱に3モデルをそろえた限定88セットは977,900円。
    「KURONO TOKYO AOYAMA SALON」を2023年1月、東京・北青山の閑静なエリアにオープン。それを記念するモデル。独特な質感のレッド、グリーン、ブラックの3色の漆ダイヤルが用意された。MIYOTA90S5を搭載。
    「グランド漆・青山」手巻き、ケース径37mm、SSケース×レザーストラップ、3気圧防水、各100本限定、394,350円。特製桐箱に3モデルをそろえた限定88セットは977,900円。
  • 浅岡肇氏浅岡肇氏
    浅岡肇 あさおか・はじめ

    1965年、神奈川県生まれ。90年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業、92年浅岡肇デザイン事務所を設立しプロダクトデザイナー、グラフィックデザイナーとして活躍。2009年トゥールビヨン搭載腕時計を発表。13年AHCI会員候補、15年より会員。16年東京時計精密を設立、18年CHRONO TOKYOをスタートさせる。22年「現代の名工」に選出される。
  • 「TSUNAMI」手巻き、ケース径37mm、SSケース×アリゲーターストラップ、日常生活防水
  • 「グランド漆・青山」手巻き、ケース径37mm、SSケース×レザーストラップ、3気圧防水、各100本限定、394,350円。特製桐箱に3モデルをそろえた限定88セットは977,900円。
  • 浅岡肇氏

「こと細かくお教えしましたよ。僕は基本的にテクニカルなことに関してはオープンです。技術での差別化はたかが知れている。問題は、その技術でいかにセンスよく仕上げるか」

時計職人的観点と同時に、デザイナーとしての視点からの独創的な作風でありながら、奇をてらわず、ある意味、王道的。ベテラン時計師や老舗ブランドがひしめく中、10年余りでここまでの存在感を示すに至った理由は、そんなところにあると思う。

また16年に東京時計精密を設立し、そこから「浅岡肇のプライベートウォッチ」をコンセプトに立ち上げたブランドCHRONO TOKYO、および海外向けにカタカナの「クロノ」をロゴに掲げた「KURONO TOKYO」も好調だ。ジャパンメイドにこだわり、浅岡氏は時計デザイナーとして製作全体を統括。権威あるジュネーブ ウォッチグランプリにおいて2020年は2部門で、22年にも1部門で最終ノミネートに残ったことも海外での人気を後押しした。最近ではオンライン予約がスタートするや、たちまち完売となるほどの人気。海外ではファンクラブもできるほどで、今回のAHCI発表会場にもクロノトウキョウのモデルを着用して訪れる愛好家が多数いたそうだ。今年1月には東京・北青山に「KURONO TOKYO AOYAMA SALON」もオープンさせ、日本はもとより海外からのファンを喜ばせている。

「クロノトウキョウのおかげで、事業に投資家の参加を仰ぐことなく、自身のクリエーションを展開できている」という。独立したスタンスを守りながら、着実に人気と実力を積み上げているケースは、スイスでもあまり例がない。

ジュネーブの時計フェア開幕直前、WBCでの大谷翔平選手の大活躍が話題となったが、ふと「浅岡氏は時計界の大谷翔平と言うべき存在ではないか?」という思いが筆者の頭をかすめた。本人がどう思っているか、今度お目にかかったら聞いてみようか。

まつあみ靖 まつあみ・やすし
1963年、島根県生まれ。87年、集英社入社。週刊プレイボーイ、PLAYBOY日本版編集部を経て、92年よりフリーに。時計、ファッション、音楽、インタビューなどの記事に携わる一方、音楽活動も展開中。著者に『ウォッチコンシェルジュ・メゾンガイド』(小学館)、『スーツが100ドルで売れる理由』(中経出版)ほか。

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ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。