リシャール・ミルが「RM UP-01 フェラーリ」を発表したのが今年7月。そのケースは前王者より0.05mm薄い1.75mm。ほとんど100円硬貨に等しい。
自動車のインパネを着想源とする他に例のないレイアウト。薄さを追求するべく機構を横方向に分散させ、センター上部にディスク式の時分表示、その右にテンプをのぞかせ、左にはファンクションセレクター、その下に巻き上げと時刻修正用のホイールが並ぶ。
これまでの最薄タイトルホルダーは、ケースバックの一部が地板を兼ねる構造を採用したが、この新王者はケース内部にムーブメントを収める従来の方式にこだわった点も特筆したい。このキャリバーRM UP-01は1.18mmと、これも機械式としては世界最薄。
パワーリザーブは45時間。5000Gの加速度にも耐え得るほか、この薄さのケースで1気圧の防水性を備え、12kgの荷重テストもクリアし剛性も十分だ。
右下の跳ね馬のロゴは、フェラーリとのコラボレーション第1弾であることを誇らしく示している。このコラボも、ウォッチシーンの一つの伝統というべきものだ。1993年から2004年までジラール・ぺルゴがこの大役を担い、パネライ、ウブロへと移り、今度はリシャール・ミル。超薄型とフェラーリコラボという時計業界を貫く二つの流れが交わったところに、この「RM UP-01 フェラーリ」が誕生したことも興味を引く。
生産本数は150本と思いのほか多い。望めば入手できるかも、と夢を抱かせてくれるが、予価は2億4750万円。フェラーリの現行新車価格をはるかに上回ることにもご留意を。
まつあみ靖(まつあみ・やすし)
1963年、島根県生まれ。87年、集英社入社。週刊プレイボーイ、PLAYBOY日本版編集部を経て、92年よりフリーに。時計、ファッション、音楽、インタビューなどの記事に携わる一方、音楽活動も展開中。著書に『ウォッチコンシェルジュ・メゾンガイド』『再会のハワイ』(ともに小学館)ほか。