
現在の生産体制は、中軸となるアトリエ・ヴティライネンに約30名、文字盤メーカーのコンブレマインに約20名、ケースメーカーのヴティライネン&カッティンに7名が在籍し、年間総生産本数は60〜80本。日本ではタカシマヤ ウオッチメゾン 東京・日本橋のみの取り扱いだが、生産数が限られるため、店頭で出会うことは難しい。
コンブレマインでは、他社からの文字盤製作の依頼にも応えているが、これらの製作数はごく限られている。アーミン・シュトロームの「グラヴィティ・イークォル・フォース」というモデルの場合、コンブレマイン製ダイヤルを採用すると、通常モデルより100万円ほど価格がアップする。その文字盤の価値がうかがえよう。
またこの6月に、ゼニスが天文台クロノメーターコンクール用に20世紀半ばに製作し、1950年から5年連続優勝の快挙を成し遂げた伝説的なキャリバー135-Oを修復し、ケースに収め、オークションハウスのフィリップスで限定10本が販売された。この愛好家注目のプロジェクトのレストアと装飾仕上げを担当したのもヴティライネン氏だった。
ちなみに販売価格は13万2,900スイスフラン、約1,800万円だった。ヴティライネン氏は、コンプリケーションを作り上げる技量を持ちながら、これ見よがしな複雑機構に傾くことなく、シンプルさの中に際立つ「仕上げ」に注力する。伝統的で手間のかかる「仕上げ」は、複雑機構に優まさるとも劣らぬ労力を要する尊いものだという信念を感じさせる。