酷暑と物価高には投資で対抗!?

Text 田嶋智太郎 経済アナリスト

暑い、そして高い。記録的な酷暑と物価高の夏である。結果、家計は燃料価格高に伴う電気料金の大幅値上げと酷暑による電力使用量の増加などで、かつてない苦しみを味わっている。世界的な気候変動の問題と対ロシア経済制裁、続く円安傾向などがその一因であることはわかっているが、いずれも解決には相当な時間を要することも事実である。だからといって、目の前の状況を嘆いたり、文句を言ったりしているだけでは何も始まらない。ここは「せめて何かできることはないか」を考えたい。

ひまわり

最もわかりやすいところで、仮に今後も円安傾向がしばらく続くならば、一つには外貨投資に手持ち資産の一部を配分することが有効となろう。取引コストが嵩かさむ「外貨預金」は極力避け、コストが比較的安く済む外国為替証拠金取引(FX)を利用して、低レバレッジで外貨に挑戦するのも一手と言える。

ドルやユーロなどの外国通貨に直接投資することが憚かられるならば、円安でメリットを受ける上場企業の株式に投資するというのも一手である。かつてほど為替変動の影響を受けなくなっているとはいえ、海外に販売拠点を広げている多くの企業にとって円安のメリットはなおも大きい。代表格は自動車株であり、いずれも元々株価が割安な水準に放置されている(=下値リスクは限られる)うえ、電気自動車(EV)の開発などで新味の材料も持つ。

酷暑で電気代が嵩むと嘆くなら、酷暑で儲かる銘柄に投資するというのも大いに検討に値する。とかく「サマーストック銘柄は思惑先行」と見なされがちだが、今年はちょっとワケが違う。

たとえば、ビール系飲料大手なら今年はアサヒグループホールディングス(証券コード:2502)に注目。同業のキリンホールディングス(2503)が「家飲み」を比較的得意とするのに対してアサヒは業務用に強いことで知られ、実際、5月のビール類全体の売り上げはキリンが前年同月比1%減であったのに対してアサヒは同27%増、業務用に限れば同3.2倍の伸びとなった。今年は、久しぶりに各地で夏のビアガーデンが展開される見通しであるうえ、アサヒは夏の風物詩とされる「カルピス」も傘下に擁する。

なお、外気温が一定のレベルを超えると甘い飲料や缶コーヒー、アイスクリームなどの売れ行きが鈍り、代わりに冷たい緑茶飲料や氷菓などの売れ行きが伸びるという。その意味では、伊藤園(2593)や江崎グリコ(2206)などに要注目。伊藤園は傘下の「タリーズ」も客足が復調傾向であり、グリコは「アイスの実」や「パピコ」などの人気が高い。

一方、気候変動の影響が今年だけのものではないと考える向きもあり、いわゆる「省エネ住宅」や「高性能な窓」などを選択する傾向も強まっている。コロナ禍を一因とする折からのリフォームブームはいまだ続いており、積水化学工業(4204)の省エネ住宅「スマートハイム」やコロナ(5909)の「エコキュート」、LIXIL(5938)の高性能窓・玄関ドアなどに対する需要は高まっている。

ちなみに、足元ではカルビー(2229)やコカ・コーラ ボトラーズジャパン(2579)など、製品の値上げに踏み切った企業の収益拡大に期待した動きも見られる。物価高には株価の値上がりで対抗するというのも一法ということになろう。

書籍
『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』 永濱利廣/講談社/924円

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副題は「なぜ給料と物価は安いままなのか」。今回の参院選でも多くの野党候補者から「賃金が上がらない国の政治」を批判する声があがっていたが、では「どうしたら賃金は上がるのか」との問いに対して納得がいく解は示されなかったように思う。書名にもある通り、その解が“日本病”にあることは明らかなのであるが、それが正しく整理されておらず、十分に理解されていない。あらためて整理&理解するために本書は有用な一冊と言える。

田嶋智太郎 たじま・ともたろう
金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産形成まで、幅広い範囲を分析、研究。講演会、セミナー、テレビ出演でも活躍。

ラグジュアリーとは何か?

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それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
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