感情を揺さぶる走り

Photo TONY TANIUCHI Text Masayoshi Kinugasa
マニュアルモード
マニュアルモードではハンドルの奥のシフトパドルで変速を行う。

市街地ではタイトに感じられる一体成形のバケットシートが、腰と背中を包み込むように支え、横Gのかかる急カーブが続いても、体が振られず疲れにくい。7速のDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)は、自動制御で最適なギアを瞬時に選んで変速するので、ブレーキングと加速を繰り返す山道を、水を得た魚のごとくに俊敏に走る。

状況に応じて行われるDCTならではのスムーズなシフトアップ&ダウンを感じながら、運転はアクセルワークとハンドル操作に集中できる。

また、A110 Sはセミオートマとしてドライバーが任意でギアを変えるマニュアルモードを備えているので、よりアグレッシブに、自分なりに走ることもできる。これも車好きにとってはうれしいポイントだ。

無駄をそぎ落としてコンパクトに徹したボディーは、アルミ素材で成形されている。その軽量さが生み出すハンドリングの良さが、峠道を駆け抜ける喜びを感じさせる。

国道410号から465号へ、複数の路線を経て継ぐ久留里街道の荒ぶる道が、穏やかな里山道へと表情を変えたところで、県道182号へとそれる。小山の間を走るこの道沿いには紅葉する木が多く、もみじロードとして親しまれている。房総では温暖な気候ゆえ、紅葉は11月末から12月初旬がピーク。燃え立つような紅葉に囲まれるルートも、初冬の房総ドライブへの誘いとなる。

もみじロードの程よいカーブを堪能したら、いよいよ本日の仕上げとなる鋸のこぎりやま山登山自動車道へと向かう。全長3㎞に満たず、わずか数分で山頂の駐車場に達する短い有料道路ではあるが、じつは映画『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』のロケにも使用されたテクニカルなコースとなっている。海を望む急斜面にへばりついたヘアピンカーブでは、スポーツカーとしての純度を高めたA110 Sが、歓喜するのがわかる。

夕方16時には閉鎖されるので、15時半ころまでには入路する必要があるが、秋から冬にかけてはその時間帯こそが秀逸。傾いた陽の光が海を輝かせて絶景となるので、わざわざであっても行く価値がある。

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ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
サステナブル、SDGs、ESG……これらのタームが、生活の中に自然と溶け込みつつあります。持続可能な社会への意識を高めることが、個人にも、社会全体にも求められ、既に多くのブランドや企業が、こうしたスタンスを取り始めています。「NILE PORT」では、先進的な意識を持ったブランドや読者と価値観をシェアしながら、今という時代におけるラグジュアリーを捉え直し、再提示したいと考えています。