お酒は、香りのよい純米吟醸を合わせた。
「シャンパンの乾杯もいいのですが、モンローが日本酒で食事を始めるという意外性も捨て難い。普段できない体験を楽しんでいただく趣向です」
なお、奥田さんは今回の「ウォーホル」というお題を知ったとき、「正直、何をどう考えたらいいのか分からず……。私は普段から美術が好きですが、それは横山大観や竹内栖鳳(せいほう)といった日本画を一通り見たという感じ。ポップアートは門外漢なので、困りました(笑)」という。
「でも彼の作品を見ていると、描きたいことを描いている潔さがある。作為がないのがすごいな、と思いました。あと、文句なしにかっこいいですよね」
奥田さんは「かっこいい」は自分の料理でも非常に大事にしているテーマだという。
「自分が身に着けるわけではありませんが、ディオールやヴィトンといったラグジュアリーブランドの店に行き、『このかっこよさ、洗練、美はどこからくるのか』を観察します」
とくに、日本料理のように伝統に立脚するジャンルだからこそ、幅広い対象から刺激を受け、美意識を掘り起こしておくことが大事だという。
「かっこよさや、キラリと光る色気を映す。そういう料理を私は作っていきたいですね」
ウォーホルの「かっこよさ」は、彼以降、どんなにポップアートの新星が現れようとも古びない。あらゆる時代、ジャンルの表現者にインスピレーションを与え続ける、そんなパワーを持っている。
奥田透 おくだ・とおる
1969年、静岡県生まれ。高校卒業後、静岡の割烹(かっぽう)旅館「喜久屋」、京都「鮎の宿つたや」、徳島「青柳」を経て、99年に静岡に「春夏秋冬 花見小路」をオープン。2003年に「銀座小十」を開業。13年にパリ、17年にはニューヨークに出店。『ミシュランガイド東京 2022』では二つ星の評価を得ている。東京すし和食調理専門学校教育顧問。
●銀座小十
東京都中央区銀座5-4-8 カリオカビル4F
TEL 03-6215-9544
www.kojyu.jp
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