進化したSUV、新時代へ
もとは未開の大地に足を踏み入れるためだけの道具でしかなかった。
しかし自動車に万能を求め、レジャーツールとして使い始めた瞬間から、このたくましい乗り物たちは、こぞってSUVと呼ばれるようになった。
21世紀に入ると、付加価値を持ったラグジュアリーSUVが花開く。
が、薄っぺらい豪華さ、取って付けたようなファッション性の時代は終わり、SUVは成熟期に移行した。地位や名声ではなく、“個性”の時代である。
伝統を頑なに守るものがいる、伝統を果敢に打ち破るものがいる。
そして、まったく新しい世界を切り開こうとするものがいる。
いま世界を牽引するSUVたちは、そのどれもが個性に満ちあふれ、
幾多のライフスタイルを受け入れる寛容性を持っている。
アメリカン・ゴージャス、日本上陸
アメリカを代表する自動車ブランド、リンカーン。フォード・グループの一員として、北米を中心に販売展開するブランドであったが、今年、新型ナビゲーターをもって日本に上陸した。初代ナビゲーターは1998年に発売され、2001年にはアメリカの大型SUV市場の4割がナビゲーターで占められたほどの人気車種である。今作は、その3代目にあたる。
プレミアム路線をひた走る
GMグループのキャデラックと並んで、プレミアム路線を伝統的に貫くリンカーン。ナビゲーターもその例に漏れず、アメリカ流のラグジュアリーをとことん具現する。メーカーが謳うコンセプトは「モダン・アメリカン・ラグジュアリー」。それは、トレードマークである「リンカーンスター」を持つ格子状のクロームグリルであり、足元を引き締める20インチのクローム・アルミホイールであり、また、プレミアムレザーシートやエボニー材のリアルウッドなどで包みこむ、贅を尽くした室内空間である。
今どき新鮮なオリジナリティ
アメリカ基準の8人乗りフルサイズSUVとあって、ボディは巨大である。世にプレミアムSUVは数あれども、いずれも、リンカーンを前にするとおとなしく感じてしまう。かといって威圧感のあるデザインではないので、スマートに乗りこなすことができるのもうれしい。また、見晴らしが良いためか、ボディサイズのわりに使い勝手は良い。5.4・V8エンジンとコントロールトラックと呼ばれる4WDシステムも、余裕たっぷりで安心感のある走りをもたらしてくれる。そして何より快感なのは、わずかに耳に届くアメリカンV8サウンドと、ゆったりとした乗り味だ。
ここ20年、アメリカでは欧州車と日本車が市場を席巻した。今や生粋のアメリカ車までが欧州車的な味付けになったといわれる。しかしリンカーンには、いかにもアメリカ車らしい大陸的な味わい、良い意味での“おおらかさ”が健在である。このようにオリジナリティあふれる新型車は、今、とても貴重な存在だ。