このところメルセデス•ベンツを“メルセデス”と略して呼ぶ人が増えてきた。かつては“ベンツ”一色だった呼称も時代とともに変わりつつあるようだ。
理由は、メディアをはじめヨーロッパに足を運ぶ人がそう口にするようになったからだろう。彼の地では“メルセデス”、いやいや“メルツェデス”という音をよく耳にする。
そんなメルセデスが日本で100%ベンツと呼ばれていた時代からEクラスは存在する。1970年代ごろだろうか、Eクラス、Sクラスと分けられてからこいつは主力車種であった。いま考えれば、「大、小」しかなかったのだからシンプルな構成である。
そのEクラスがこのたびマイナーチェンジを受けた。主立った内容はフェイスリフトと安全装備の充実、それとガソリンエンジンの進化だ。いま現在ラインナップは増えモデル名は多岐にわたっているが、Eクラスの存在意義はまだまだ大きく、そこに未来のメルセデスが見える内容であったことをお伝えしよう。
それに今回はAMG版にも追加モデルが発表されるなど彼らのホンキが伺えた。メルセデスの攻めの姿勢はまだまだとどまらないようだ。
では、具体的にどう進化したか、中身を簡単にお伝えしよう。
まず、フロントマスクの意匠が変わった。4つの角張ったヘッドライトはレンズカバーにより2つとなる。先代もその先代も独立した4つの丸型だったことを考えれば、久々の2灯だ。とはいえ、夜ポジションランプを点けるとLEDで4つのラインが浮かび上がる。その意味じゃ昼と夜で2つの顔を持つといえるだろう。
2つの顔といえば、今回からグリルの形状が2種類用意されたのもトピックス。3本のルーバーとボンネットのスリーポインテッドスターを形どるオーナメントを有する“エレガンス”とスポーツカーグリルの“アバンギャルド”が設定され、どちらかを選ぶこととなった。要するにCクラスと同じ手法だ。
この他の外観上のポイントはサイドのキャラクターラインとリアのコンビネーションランプおよびバンパー。キープコンセプトながらにわかに新しさを感じさせる。ボディタイプはセダンとステーションワゴンの2種類。バランスのとれたワゴンボディはさすがだが、セダンの方がしっくりくる。Eクラスの神髄はこちらであると思わせる完成度の高い仕上がりをしている。
デザインの次にクローズアップしたいのは、充実の安全装備。じつは次期Sクラス用と思われていたものがこのクルマにテンコ盛りされていたのだ。
具体的には速度50km/h以下での自律ブレーキングや車線逸脱を片側のブレーキをかけることで防止するシステムなどが挙げられる。ここでそれをひとつずつ解説はしないが、どれもメルセデスらしい最先端の安全技術であることは間違いない。ほぼ360度クルマのまわりをモニタリングすることで、安全性を高めている。
また、パワートレーンの進化も見逃せない。特にガソリン4気筒ユニットに組み合わされる成層希薄燃焼+ターボはさらに高効率を実現する。排出ガスの低減や省燃費向上に関する技術革新はまだまだ続けられる。
でもってこれが乗るといい。小さいエンジンでもビシッと安定し、しっとりした大人の乗り味を提供する。うん、これは快適。そしてE400のV6をツインターボで加給するエンジンではイメージ以上にスポーティさをアピール。まぁ、この辺の精緻なつくり込みはメルセデスの意地といったところかもしれない。
「メルセデス=Eクラス」の図式は不変だ。よっていつの時代もマーケットからは厳しい視線が浴びせられる。が、今回こいつのステアリングを握って、それにしっかり応えていることがわかった。新型Eクラスはそれを証明してくれた。
※『Nile’s NILE』に掲載した記事をWEB用に編集し再掲載しています