オーセンティックなブランドのハイエンドモデルから、レアなビンテージウオッチまで、腕時計を極めた人ほど、未知なる新興ブランドの斬新な魅力に引かれるものだ。そんな“目利き”に、レッセンスのモデルは強烈にアピールするに違いない。
2009年にベルギー出身のプロダクトデザイナー、ベノワ・ミンティエンスによって設立されたレッセンス。翌2010年、世界のウオッチトレンドを動かす一大エキシビション、バーゼルワールドでデビューするや、いまだかつてない独創的な機構でセンセーションを巻き起こした。まずはファーストモデルの「シリーズ1」を見てみよう。
一見すると、時針、分針、秒針が独立したレギュレータータイプの時計のようだが、そうではない。分針を配した大型ディスクが1時間で1回転するのと同時に、サテライトダイヤルと名付けられた時、秒、AM/PM表示のディスクも時々刻々位置を変えていく。つまり、各ディスクが自転しながら公転する惑星のような動きを見せるのだ。しかも各サテライトダイヤル外周のインデックスを刻んだリングは、常に正位置をキープし、時刻を読み取りやすくしている。ここには、針を配したディスクと同じスピードで、外周リングが逆方向に回転するメカニズムが導入されている。実に複雑なギアシステムが秘められているのが、分かるだろうか。
そのルックスも個性的だ。段差のないフラットな文字盤が、時刻を見るたびにレイアウトを変えている。ブランド名を仰々しく表示することなく、ディスクの12時位置に、ヒューマニズムを象徴し、レッセンス誕生の地アントワープのシンボルでもある、手のひらを模したロゴマークが、さりげなくあしらわれているのも心憎い。
この「シリーズ1」をベースに、進化形モデルとして登場したのが「タイプ1」である。まず、リュウズがなくなっていることに気付くだろう。ケースバックのサファイアクリスタルを回転させて、時刻修正とぜんまいの巻き上げを行う独自機構を搭載し、よりピュアなラウンドフォルムに進化。文字盤も中央がわずかに膨らんだラウンド状に。これでサテライトダイヤルを作動させるのは、かなり高度な計算と技術が必要だったことが想像できる。さらに、「タイプ1」のAM/PM表示に代わって曜日表示を採用。ケース径を44㎜から42㎜にサイズダウンした他、薄型化も実現され、装着性も向上。ストラップの付け替えに関しても、「シリーズ1」では専用工具が必要だったが、より簡単に交換できるシステムが採用されている。
「シリーズ1」は、すでに生産が終了しており、今後は「タイプ1」に切り替わっていく予定だ。レッセンスの記念碑的なデビュー作である「シリーズ1」を、在庫のあるうちに手にするか、それとも進化型の「タイプ1」を選ぶか? いずれも、他のウオッチブランドでは決して味わえない満足感が得られはずだ。
●モントレ ソルマーレ TEL03-3833-4211
※『Nile’s NILE』2015年4月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています