懐中時計用のムーブメントを搭載し、直径は42㎜。1930年代当時としては破格のラージサイズと、航海用時計に匹敵する高精度を誇る腕時計として誕生した「ポルトギーゼ」。その名を受け継ぐモデルが、IWC創業125周年記念として1993年に復刻されるや、人気に火がついた。
これを受け「ポルトギーゼ・クロノグラフ」が登場したのが98年。30分積算計を12時位置に、スモールセコンドを6時位置に配した縦型2カウンター仕様。すらりと伸びたリーフ針やアラビア数字のアプライドインデックス、ドット状のミニッツマーカーなど、オリジナル譲りのオーセンティックな端正さに加え、クロノグラフならではのスポーティーなニュアンスも。スリムなベゼルは、完成された絵画を引き立てる額のように、ダイヤルと絶妙のバランスを奏でている。
2019年には、それまでの汎用ムーブメントに代わって自社製キャリバーを搭載し、信頼性を向上させた。しかし、そのルックスはほぼ変更されていない。デビュー当時から、この時計の完成度がいかに高く、タイムレスな存在かが分かる。
この「ポルトギーゼ・クロノグラフ」、日本での人気は言わずもがな、ヨーロッパ、特にイタリアのファッショニスタから絶大な支持を受けている。エレガントなスーツや高級素材で知られる、さるメゾンのマーケティング経験者が、こう証言する。
「ブランドCEOは、来日するときも、こちらが本社を訪れたときも、決まって『ポルトギーゼ』。その影響なのか、ボードメンバーのほとんどが、この時計を着けるようになった。ファッションシーンを知り抜いている人にとって、この時計は必須アイテムでした」
実は「ポルトギーゼ・クロノグラフ」を、ミラノでは多くの女性が買っているというデータがある。端正でスマートなルックス、それに見合う充実の中身。もし、この時計を身に着けた女性と出会ったなら、これを選ぶ審美眼を持ち、知的な雰囲気にあふれた彼女は何者? そう思わずにはいられないだろう。
性別を問わずオーナーの人となりを雄弁に語る時計だからこそ、シェア・ウォッチとしてもお勧めできる。
「ポルトギーゼ」の中でも、プレステージ感と複雑機構の魅力を堪能できるのがゴールドケースの『ポルトギーゼ・パーペチュアルカレンダー』だ。
IWCを象徴する4桁の西暦表示を備え、ムーンフェイズは577.5年で1日の誤差しか生じない超高精度。約7日間のロングパワーリザーブを誇る。ブティックエディションだけのブルーダイヤルは、傷つきにくくシックな色調のArmor Gold®のケースに映える。IWCの伝統とプライドから誕生した傑作と言うほかない。
最近、時計の資産価値への注目度が高まっている。
昨年5月、フィリップスのオークションに「ポルトギーゼ・クロノグラフ」に先だって開発されたスプリットセコンド・クロノグラフのプロトタイプが、90年代当時IWCの技術者として製作に携わった人物によって出品された。8000~1万6000スイスフランという予想を大幅に上回り落札額は11万9700スイスフラン(約1500万円)。IWCの時計の高い評価を伝えるひとつの逸話として、最後に紹介しておきたい。
●IWC TEL0120-05-1868
※『NilE’S CODE』VOL.4に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています