リシャール・ミルのレアモデルに出合える幸運
2018年のジュネーブでの新作エキシビションに合わせて、リシャール・ミルは、1970年代に出版されたピカソの画集『Los Toros』を再編集した。そこには「リシャール・ミルは時計のアートを目指す」というメッセージが込められていた。
他に類を見ないクリエーティブなコンセプトの下、独創性の高い複雑機構や革新的なマテリアルなどにより、“エクストリームな”世界観を具現化してきたウォッチブランド、リシャール・ミル。一つひとつのモデルに真摯に向き合い、高度な技術を惜しみなく投入し完成されたタイムピースは、すでにアートに匹敵する評価を獲得している。
現代アートや絵画にしろ、骨董にしろ、いわゆるアート作品の場合、オークションを始めとする二次流通が整備され、時代を経るにつれ、評価の上昇に見合った取り引きが行われている。腕時計も例外ではなく、オークションで数億円もの高値が付いた腕時計が、話題に上ることも少なくない。ただ、手持ちのハイエンドウォッチの鑑定、再販時のメンテナンス、手数料など、いささか煩雑に思える手続きを懸念する声があるのも事実だ。
リシャール・ミルでは、VIP顧客を対象に2012年から認定中古制度に取り組んできた。リシャール・ミルは生産本数が少なく、新作を目にすることさえ容易ではないケースがままある。そこで、一度誰かの手に渡り再販されることになった“プレオウンド”モデルを、VIP顧客に紹介するシステムの開拓を進めてきた。これが買い換えのために所有モデルを売却したいオーナーにも広がり始める。
16年には、プレオウンドモデルを取り扱う店舗「NX ONE」を東京・銀座に設立、ますます事業を拡充していく。
顧客にとっては、所有するリシャール・ミルを、正規のメンテナンスを受け、適正かつ安心して二次流通に委ねられるメリットは大きい。大半は顧客からの委託販売で、手数料は原則的に販売価格の20%と透明性も高く、買い取りも実施。日本未入荷だったレアモデルが、プレオウンドモデルとして店頭に並ぶこともある。
リシャール・ミルサイドにとっても、アートにも匹敵する数々の名機のコンディションを管理しながら、価値をキープしていけるメリットがある。また、初めてリシャール・ミルに触れる人にも、新作とともにプレオウンドモデルを紹介し、その世界を幅広く体感してもらうことが可能だ。
その役目を担う「NX ONE」が、この1月から、これまでリシャール・ミルのブティックがあった銀座8丁目に移転した。路面店となったことで、これまで以上に多くの顧客の利用が期待されている。リシャールミルジャパン社長の川﨑圭太氏は、事業の展望をこう語る。
「現在はリシャール・ミルのみを取り扱っていますが、今後は他のブランドの正規認定中古モデルも取り扱っていきたい。新たな信頼できるプレミアムウォッチの販売方法が、腕時計流通を変えることになると考えています」
現在「NX ONE」は、銀座店の他、西武渋谷店、福岡店がオープンし、今後も全国で展開が予定されている。
Hモーザー初の直営店という“顔”
この「NX ONE銀座」にはもう一つ、Hモーザーの直営店という顔もある。Hモーザーは、スイス・シャフハウゼンの地で1828年創業という歴史を持ち、2002年に復興後も、製作が困難なひげぜんまいまでも自社製造する技術力と、優雅なグラデーションのフュメダイヤル、また永久カレンダーなどの複雑機構もミニマルで使いやすいスタイルに落とし込む独自の哲学により、高い評価を得てきた。
「NX ONE」の旧店舗では、ショールームという位置づけで、Hモーザーを紹介してきたが、今回の移転により、国内唯一の直営店として、さらなる取り組みを見せ始めている。文字盤からロゴまでも排したコンセプトモデルや、世界で最も黒い物質ベンタブラック®を文字盤に用いたシンプルモデルやトゥールビヨン、さらにケースとブレスレットが一体化されたスポーティーな新作クロノグラフ「ストリームライナー・フライバック クロノグラフ オートマティック」も、実際に手に取り、フィット感や独創的な操作性を確認することができる。
リシャール・ミルの認定中古モデルとHモーザーという、見逃せないラインアップをそろえた「NX ONE銀座」。時計愛好家にとって銀座を訪れる楽しみが増したことは間違いない。
●NX ONE銀座
東京都中央区銀座8-4-2
TEL03-3573-7277
※『Nile’s NILE』2020年2月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています