珠玉のアンティークウォッチ

創業以来、半世紀近くにわたり、アンティークウォッチの名品を取り扱ってきたシェルマン。東京・銀座はみゆき通りのフラッグシップショップ、シェルマン銀座店を訪ねれば時の魅惑のモデルが多数待ち受けている。
オールドパテックの取り扱いで定評のある同店だが、今回は、パテック以外の逸品を紹介しながら、その世界に触れる。

Photo Katsunori Kishida Text Yasushi Matsuami

創業以来、半世紀近くにわたり、アンティークウォッチの名品を取り扱ってきたシェルマン。東京・銀座はみゆき通りのフラッグシップショップ、シェルマン銀座店を訪ねれば時の魅惑のモデルが多数待ち受けている。
オールドパテックの取り扱いで定評のある同店だが、今回は、パテック以外の逸品を紹介しながら、その世界に触れる。

「愛好家の方からアンティーク初心者までお選びいただける、幅広いラインアップで展開しています。アンティークウォッチにもトレンドがありますから、それを意識しながら、シェルマンならではの審美眼で希少アイテムを随時取りそろえています」

こう語るのは、シェルマン 銀座店店長の高橋らんど氏である。

オールドパテックで定評のある同店だが、今回はパテック以外の逸品を紹介し、その世界に触れていきたい。まずジュネーブの名門、ヴァシュロン・コンスタンタン。

「ヴァシュロン・コンスタンタンは、端正さや重厚感の一方、デコラティブさも魅力です。こうした美術工芸的価値の高いモデルをお探しの愛好家もいらっしゃいます。グレード感がありながらパテックより手にしやすい価格のものも少なくありません」

ここに紹介する中で、船の舵を意味する“helm”と呼ばれる1950年代製のモデルが、デコラティブデザインを象徴するもの。純正ケースが付属していることも極めてめずらしい。

50年代に製作されたWGとYGケースの自動巻きモデルは、初心者にもお勧めできる端正さが魅力。ともに、ローターにゴールド素材を用い、スワンネック緩急針を備えたキャリバー1071を搭載する。

1900年代初頭に製作された懐中時計は、ケースの11時位置の突起を押しながらリュウズを回して時刻修正する“ダボ押し”と呼ばれるタイプ。美しいコンディションを保ちながら、味わい深さにあふれている。

helm
(右)“helm” (船の舵)と通称されるモデル。ヴァシュロンらしいデコラティブなデザインが際立つ一本。純正ボックス付属。1950年代製。手巻き、ケース径32 ㎜、PGケース、3,888,000円。(中)シンプルながら、存在感のあるくさび形インデックスと重厚感漂う希少なWGケースが魅力。Ref.6378、1950年代製。自動巻き、ケース径35㎜、WGケース、950,400円。(左)バーインデックス仕様の端正さを極めた一本。ローターにゴールド素材を使用した全回転式のCal.1071搭載。当時の保証書類や、ムーブメントナンバーを刻んだコインなども付属。1950年代製。自動巻き、ケース径35㎜、YGケース、972,000円。(手前)1900年前後の限られた時代につくられたダボ押しタイプの懐中時計。ダボと呼ばれる側面の突起部分を押しながらリュウズを回して時刻を合わせる。1900年代製。手巻き、ケース径44㎜、YGケース、540,000円。

オメガとロンジンも、アンティーク市場で高い人気を誇る。

「50~60年代のものをよく目にすると思いますが、今回は30~40年代のものをご紹介します。アールデコを踏まえつつデザインバリエーションが広がった時代で、アンティークならではの通好みなモデルがそろっています。最近は同心円と放射状のデザインを組み合わせたセクターダイヤルや、ベゼルに段差をつけたステップベゼルのモデルの人気が高まっています」

オメガからは、セクターダイヤルの2本と、手首に沿ってアールのついたレアなレクタンギュラーモデルの3本。全て30年代製だ。

  • オメガ アンティークウォッチ オメガ アンティークウォッチ
    (右)セクターデザインに加え、夜光インデックス&夜光針というデザイン性の高い希少な一本。1930年代製。手巻き、ケース径30㎜、SSケース、237,600円。(中)レクタンギュラーケースに加え、手首に沿ってアールをつけたカーベックスタイプの希少モデル。1930年代製。手巻き、サイズ29.5×21.5㎜、WGケース、972,000円。(左)段差のあるステップベゼルにツートンのセクターダイヤルという愛好家好みの一本。1930年代製。手巻き、ケース径32.5㎜、SSケース、594,000円。
  • ロンジン アンティークウォッチ ロンジン アンティークウォッチ
    (右)第2次世界大戦時に英国空軍に納入された、センターセコンド仕様のミリタリーモデル。1940年代製。手巻き、ケース径32㎜、ニッケルケース、496,800円。(中)フラットベゼルのカラトラバスタイルの一本。市場で目にする32㎜の同モデルとは全く別の存在感を放つラージサイズモデル。1930年代製。手巻き、ケース径37.5㎜、SSケース、2,376,000円。(左)ダーツの標的や照準を思わせる、ツートーンの同心円デザインの文字盤を採用した、人気のブルズアイモデル。1940年代製。手巻き、ケース径32.5㎜、SSケース、388,800円。
  • オメガ アンティークウォッチ
  • ロンジン アンティークウォッチ

ロンジンからは、英国空軍に納入された40年代のモデル、同じく40年代製のブルズアイダイヤルと呼ばれるツートーンの同心円文字盤のモデル、そして市場ではめったにお目にかかることのないカラトラバスタイルのラージサイズモデル。

「アンティークウォッチは、全てが一点もの。ブランドからでも、ヴィンテージな雰囲気からでも、デザインからでも、入り口は自由です。そこからディテールや仕様の違いなどを知り、その魅力に触れていただければと思います。試着されることもお勧めします。小ぶりなモデルでも、往年の時計ならではの立体感や迫力は、腕に載せて初めて分かります」

アンティークウォッチの価格は上昇傾向にあるものの、一度上がれば暴落することはまずないという。資産という観点からも、安心して選べるのも大きな魅力と言えそうだ。

●シェルマン 銀座店 TEL03-5568-1234

※『Nile’s NILE』2019年7月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています

ラグジュアリーとは何か?

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