「愛好家の方からアンティーク初心者までお選びいただける、幅広いラインアップで展開しています。アンティークウォッチにもトレンドがありますから、それを意識しながら、シェルマンならではの審美眼で希少アイテムを随時取りそろえています」
こう語るのは、シェルマン 銀座店店長の高橋らんど氏である。
オールドパテックで定評のある同店だが、今回はパテック以外の逸品を紹介し、その世界に触れていきたい。まずジュネーブの名門、ヴァシュロン・コンスタンタン。
「ヴァシュロン・コンスタンタンは、端正さや重厚感の一方、デコラティブさも魅力です。こうした美術工芸的価値の高いモデルをお探しの愛好家もいらっしゃいます。グレード感がありながらパテックより手にしやすい価格のものも少なくありません」
ここに紹介する中で、船の舵を意味する“helm”と呼ばれる1950年代製のモデルが、デコラティブデザインを象徴するもの。純正ケースが付属していることも極めてめずらしい。
50年代に製作されたWGとYGケースの自動巻きモデルは、初心者にもお勧めできる端正さが魅力。ともに、ローターにゴールド素材を用い、スワンネック緩急針を備えたキャリバー1071を搭載する。
1900年代初頭に製作された懐中時計は、ケースの11時位置の突起を押しながらリュウズを回して時刻修正する“ダボ押し”と呼ばれるタイプ。美しいコンディションを保ちながら、味わい深さにあふれている。
オメガとロンジンも、アンティーク市場で高い人気を誇る。
「50~60年代のものをよく目にすると思いますが、今回は30~40年代のものをご紹介します。アールデコを踏まえつつデザインバリエーションが広がった時代で、アンティークならではの通好みなモデルがそろっています。最近は同心円と放射状のデザインを組み合わせたセクターダイヤルや、ベゼルに段差をつけたステップベゼルのモデルの人気が高まっています」
オメガからは、セクターダイヤルの2本と、手首に沿ってアールのついたレアなレクタンギュラーモデルの3本。全て30年代製だ。
ロンジンからは、英国空軍に納入された40年代のモデル、同じく40年代製のブルズアイダイヤルと呼ばれるツートーンの同心円文字盤のモデル、そして市場ではめったにお目にかかることのないカラトラバスタイルのラージサイズモデル。
「アンティークウォッチは、全てが一点もの。ブランドからでも、ヴィンテージな雰囲気からでも、デザインからでも、入り口は自由です。そこからディテールや仕様の違いなどを知り、その魅力に触れていただければと思います。試着されることもお勧めします。小ぶりなモデルでも、往年の時計ならではの立体感や迫力は、腕に載せて初めて分かります」
アンティークウォッチの価格は上昇傾向にあるものの、一度上がれば暴落することはまずないという。資産という観点からも、安心して選べるのも大きな魅力と言えそうだ。
●シェルマン 銀座店 TEL03-5568-1234
※『Nile’s NILE』2019年7月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています