極寒のジュネーブの最後を飾るエキシビション
厚手のダウンを羽織っていても、いてつくような寒さが身に染みる。そんな2019年1月のジュネーブで、例年通り新作タイムピースが発表された。しかし、極寒のジュネーブでの新作発表は、実は今回が最後となる。
理由は、ジュネーブよりもむしろ、3月に開催される世界最大のウォッチ&ジュエリーショー、バーゼルワールドにある。昨年、バーゼルの出展社数が激減。それに追い打ちをかけるかのように、スイス時計業界の最大勢力というべきスウォッチ グループが、バーゼルからの撤退を表明。その後も出展を取りやめるブランドが相次いでいる。出展コストの高騰、サービスの不備など、フェア主催者に対してくすぶっていた不満が、一気に表面化した形だ。主催者サイドは改善策を講じようと躍起になっており、その一環で、フェア開催期日の見直しも図られた。
かつて、ジュネーブとバーゼルは連続した期間で開催されていたが、2009年からSIHHが、それまでより2カ月以上早い1月開催に踏み切り、今年で丸10年。しかし来年から改めて連続した日程で開催することが、昨年12月に発表された。2020年はジュネーブが4月26日から29日、バーゼルが4月30日から5月5日の予定で、24年までこのフォーメーションを継続する契約が結ばれている。
1月と春先の2度スイスを訪れなくてはならなかった関係者にとっては朗報だが、これがブランドのバーゼル離れの抑止力となるかが注目される。
苦戦が続くバーゼルに比べて、相対的に重要性が増したかのように見えるジュネーブサイドだが、不安要素がないわけではない。今年のSIHHは、展示会場パレクスポのメインホールに18メゾン、ハイエンドな独立系ブランドを集めたスペース「カレ・デ・オルロジェ」に17メゾンという陣容。
参加ブランド数は昨年と同じだが、これまでホテルなどで独自に新作発表してきたボヴェが初参加した一方、ヴァン クリーフ&アーペルが不参加となった。ブティック展開を強化する中で、ホールセール向けプレゼンテーションの必要性が薄れたためだという。またオーデマ ピゲ、リシャール・ミルも今回を最後にSIHHからの撤退を表明。スイス時計業界のエキシビションの在り方が、大きな曲がり角に差し掛かっているのは間違いない。
表現力の進化や新機構サービスに注目
そんな不安も内包しつつスタートした今年のジュネーブだったが、全体的な傾向としては、ここ数年続いている“売れる”モデルで手堅くまとめた印象が強かった。ケース素材の見直しや、自社ムーブを汎用ムーブにチェンジするなど、価格を意識した動きも目立った。これをネガティブに捉える向きもあるだろうが、ユーザーフレンドリーなスタンスが強まったと、肯定的に考えることもできるだろう。
その一方で、「やられた」「この手があったか」とうならされるクリエーティブなモデルやサービスも多数登場した。カルティエやリシャール・ミルは、あえてコンプリケーションを封印し、片や歴史に根差した美的アプローチを、片や職人技を駆使しながらポップな表現を見せた。
逆にジャガー・ルクルトやヴァシュロン・コンスタンタン、ボヴェ、F.P.ジュルヌなどは、超絶コンプリケーションで、プライドを示した。今回がSIHH最後となるオーデマ ピゲの大型新コレクション「CODE11.59 バイオーデマ ピゲ」も話題だった。
「カレ・デ・オルロジェ」に出展したレッセンスが発表した新技術「eクラウン」には目を見張った。機械式時計でありながらスマホと連動し、時刻修正するもの。こうした技術の登
場は予想されていたが、レッセンスが先陣を切る形となった。
新機軸として注目したいのがパネライ。新作の限定タイムピースに、イタリア海軍特殊部隊での体験トレーニングや、フレンチ・ポリネシアのモーレア島でのダイビングなど、スペクタクルな体験をパッケージした。ロジェ・デュブイCEOからパネライCEOに転身したジャンマルク・ポントルエ氏が前職時代から展開していたサービスを発展させたものだが、タイムピースをプロダクトとしてではなく、ライフスタイルアイテムとして捉え直そうとする動きは、今後時計業界内に影響を与えそうだ。
エコ、サステナブルなどのメッセージ性の萌芽
時計業界では、これまであまり主張されてこなかった、エコ、オーガニック、サステナブルなどのメッセージを発信しようとする動きの萌芽も感じられた。毎年、コンセプトウォッチが話題となるH.モーザーは「モーザー・ネイチャー・ウォッチ」を発表。スイスアルプス産の鉱石をダイヤルに用い、ケースを本物の草花や苔などで装飾した。この驚きのモデルは、環境保全へのメッセージが込められていた。
2019年はアポロ11号の月面着陸50周年に当たることからか、宇宙を意識したムーンフェイズモデルも豊作。中でも独創性の高いムーンフェイズモデルを発表したエルメスのブースには、日本人デザインエンジニア吉本英樹氏による、太陽電池の廃材を利用した巨大な地球のインスタレーションが登場。
ジラール・ペルゴは“EARTH TO SKY”をテーマに掲げ、地球や宇宙空間への意識を新作やブースに反映させた。また、モンブランはブース内を森林のイメージに。ジャガー・ルクルトも、本社のあるジュウ渓谷の自然をブース内に再現した。
ファッションシーンや自動車業界では、地球環境に対するメッセージ発信や、それと直結した製品はすでに定番化している。時計業界もCSR活動を通じて、こうしたメッセージを発してはいたが、タイムピースそのものが、メッセージ性を持つことが重要だろう。これからの時代、高級時計はライフスタイルの中で、いかなる存在意義を持つか? サステナブルな社会の在り方と、どう関わっていくのか? それを真剣に問い直すことが、ネガティブな空気が漂う時計業界の未来を拓くことになるのかもしれない。
SIHH 2019
・スインギング・ロンドン、 今、新たなきらめき CARTIER
・デビュー10周年を記念する瞬転式デイト表示 A.LANGE & SÖHNE
・新コレクションに伝統の複雑機構を載せて AUDEMARS PIGUET
・“初”ずくめのスポーティー トゥールビヨン VACHERON CONSTANTIN
・地球儀と天球儀が、時の秩序と神秘を物語る GIRARD-PERREGAUX
・SIHH初参加で見せた技術力と審美性 BOVET
・新生スピットファイアのフラッグシップ IWC
・美しさにこだわったトゥールビヨン JAEGER-LECOULTRE
・匠の技でスネークスキンの質感を再現 PIAGET
・英国王室の気品を可憐に BACKES & STRAUSS
・スイーツとフルーツを盛り合わせた“有終の美” RICHARD MILLE
・時の哲学、再降臨 FRANCK MULLER
・ブランド創立20周年を祝う垂直トゥールビヨン F.P.JOURNER
・上品さが際立つパーペチュアルカレンダー PARMIGIANI FLEURIER
・シンプルさの中に息づく技術的こだわり GREUBEL FORSEY
・詩的かつ技巧的なダブルムーンフェイズ HERMÈS
・腕時計オーナーにスペクタクルな体験を提供 PANERAI
・スーパースポーツカーの世界観をシェア ROGER DUBUIS
・水のように流れる時とダイヤモンドの競演 HYT
スインギング・ロンドン、 今、新たなきらめき CARTIER
美が存在するあらゆるところに、その美を明らかにする―そのビジョンの下、美的クリエーションを追究した新作を用意したカルティエ。
「ベニュワール アロンジェ」は、そのスタンスを象徴するものだ。“バスタブ”を意味するオーバルシェイプの伝説的モデル「ベニュワール」は、ルイ・カルティエによって1912年に誕生し、50年代末には現在の形へと進化。さらに60年代には、“スインギング・ロンドン”の真っただ中のカルティエ ロンドンのアトリエで、手首いっぱいにまで引き伸ばされた「ベニュワール アロンジェ」が誕生している。
これに現代的な解釈を加えた新コレクションが、ここに紹介するモデルである。全身を埋め尽くすブリリアントカットダイヤモンド894個(計12.76ct)が、60年代のパッションを伝える官能的にして洗練されたフォルムを、優雅にきらめかせる。
●カルティエ カスタマー サービスセンター
TEL0120-301-757
https://www.cartier.jp/
デビュー10周年を記念する瞬転式デイト表示 A.LANGE & SÖHNE
2019年のA.ランゲ&ゾーネを象徴する数字は25と10。前者は、ランゲ復興第1作「ランゲ1」の誕生25周年。SIHHでのアニバーサリーモデルを皮切りに、10月まで毎月スペシャルピースが登場する。
後者は、デジタル表示時計「ツァイトヴェルク」の10周年。これを記念し、文字盤外周にユニークなデイト表示を備えた、新開発自社製キャリバーによる「ツァイトヴェルク・デイト」が発表された。「ツァイトヴェルク」といえば1分、1時間が経過する瞬間にディスクが切り替わる瞬転式メカニズムが特徴だが、デイト表示にもこれを導入。深夜0時になると同時に、全てのディスクが一斉に切り替わる。
ランゲの真摯なものづくりのスタンスを伝える、その一瞬を体感できるのは、この時計のオーナーの特権と言っていい。
●A.ランゲ&ゾーネ
TEL03-4461-8080
www.alange-soehne.com
新コレクションに伝統の複雑機構を載せて AUDEMARS PIGUET
今回が最後のSIHH参加となるオーデマ ピゲ。このラストミニッツのタイミングで「新しい1日が訪れる1分前」を意味する名前の新コレクション「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」を発表した。極めて薄いベゼルのラウンドケースは一見クラシック。
しかし八角形のミドルケースや、オープンワークのラグ、またサファイアクリスタル風防の内側はドームカットの一方、外側は6時から12時方向に垂直カーブした形状とすることで、視認性を高めるだけでなく、見る角度で異なる表情が楽しめるなど、チャレンジングな意欲もうかがえる。
全13型の中で、優美さが際立っているのが、このパーペチュアルカレンダーモデル。アベンチュリン文字盤とPGケースとが絶妙のハーモニー。ベナミアスCEOが「最も重要なローンチ」と語ったこのニューカマーの“明日”は、すでに約束されている。
●オーデマ ピゲ ジャパン
TEL03-6830-0000
www.audemarspiguet.com/jp
“初”ずくめのスポーティー トゥールビヨン VACHERON CONSTANTIN
海のかなたへといざなうような旅心をかき立てるスポーティーエレガントなコレクション「オーヴァーシーズ」に、“初”となるトゥールビヨンモデルが加わった。しかも、ブランド“初”のSSケースのトゥールビヨンという点も興味を引く。
昨年発表された「トラディショナル・トゥールビヨン」に搭載された、ブランド“初”の自動巻きトゥールビヨン・キャリバー2160を採用。通常の自動巻き機構とは異なり、ケース内周に沿って回転・巻き上げを行うペリフェラル・ローターにより、ケース厚10.39㎜と薄型でありながら、80時間ものパワーリザーブも実現している。ラグジュアリーさと実用性を兼備したトゥールビヨンと言って差し支えない。
●ヴァシュロン・コンスタンタン
TEL0120-63-1755
www.audemarspiguet.com/jp
地球儀と天球儀が、時の秩序と神秘を物語る GIRARD-PERREGAUX
“EARTH TO SKY”をテーマに掲げたジラール・ペルゴ。ブランドを代表する「ロレアート」や「1966」から、宇宙空間や地球を思わせるブラック&ブルーをまとったモデルを発表。そして、今回のテーマを最もよく表現した「ブリッジ コスモス」も登場した。
裏蓋に刻まれた「コスモス」の名のロゴは、1885年にジラール・ペルゴが商標登録していたものだという。12時位置に時分表示、6時にトゥールビヨン、3時にはデイ/ナイト表示とGMT機能を兼ねた地球儀、9時位置には23時間56分4秒で正確に回転する、12星座を配した天球儀を搭載。チタンケースはブラックPVD加工後、サンドブラスト処理により、ムーンダスト風の質感に仕上げられている。
宇宙の神秘を腕に乗せるロマンにあふれたコンプリケーションである。
●ソーウインド ジャパン
TEL03-5211-1791
www.girard-perregaux.com/ja
SIHH初参加で見せた技術力と審美性 BOVET
2018年までジュネーブ市内のホテルで独自に展示会を開催していたボヴェだが、2019年SIHHに初参加。昨秋、権威あるジュネーブウォッチグランプリで、ボヴェの天文腕時計が最高賞の「金の針」賞を受賞。その余勢を駆ったかのような、インパクトのある新作「ディミエ リサイタル26」を発表した。
12時側から6時方向に傾斜のついた「ライティングスロープ」ケースはサファイアクリスタル製。印象的なドーム状のブルークオーツダイヤルの12時位置には、立体的なムーンフェイズ、8時位置にビッグデイト、4時位置に10日間ものパワーリザーブ表示、6時位置にフライングトゥールビヨンを搭載。ヒゲゼンマイに至るまで自社製という確かな技術力が、このブランドの力強さを物語っている。
●DKSHジャパン
TEL03-5441-4515
www.bovet.com
新生スピットファイアのフラッグシップ IWC
例年、ワンコレクションにフォーカスして新作を発表するIWC。2019年はパイロットウォッチにスポットを当て、新生「スピットファイア」コレクションや「トップガン」シリーズの新作、また「プティ・プランス」の特別モデルなどを発表した。
ここに紹介するのは、自社製キャリバーを搭載した新生「スピットファイア」のパーペチュアルカレンダーモデル。IWCを象徴する4桁の西暦表示、約7日間のロングパワーリザーブ、また577.5年間に1日の誤差しか生じない南北両半球のムーンフェイズなど、技術力の結晶が、タフな外装に詰め込まれた。オリーブグリーンの文字盤と絶妙のコンビネーションのブロンズケースは、自分で時計を“育てる”経年変化も楽しめる。
●IWC
TEL0120-05-1868
www.iwc.com/jp
美しさにこだわったトゥールビヨン JAEGER-LECOULTRE
“アート・オブ・プレシジョン(精度という名の芸術)”をテーマに掲げたジャガー・ルクルト。
2018年のSIHHでは新コレクションの「JLC ポラリス」に注力したが、2019年は超複雑モデルを発表し、屈指の技術力を誇るマニュファクチュールの面目を施す一方、「マスター・ウルトラスリム」コレクションを充実させてきた。その中でフラッグシップ的な存在が、自動巻きトゥールビヨンを搭載したこのモデル。
ややグリーンがかったブルーのギョーシェエナメルダイヤルが実に優美。トゥールビヨンのブリッジも、従来の二等辺三角形タイプから、繊細な1本のバータイプに変更。機構のみならず、見た目の美しさにもこだわり抜くスタンスを見せた。
●ジャガー・ルクルト
TEL0120-79-1833
www.jaeger-lecoultre.com
匠の技でスネークスキンの質感を再現 PIAGET
1957年以来、ゴールドという素材に特別な芸術性を与え続けてきたピアジェ。その歴史に向き合い、60~70年代に数多くのセレブリティーが所有したアーカイブピースの技法の継承・発展に取り組み、2018年は木目、毛皮、フロスト(霜)など、自然にインスパイアされた質感をゴールドで再現したピースを発表した。
2019年は、伝統技法を進化させた全く新しい仕上げとして、スネークスキンの質感をブレスレットから文字盤に至るまで全身に再現したモデルを披露。繊細なハンドエングレーブとポリッシュを駆使した、サボワール・フェール(匠の技)の成果は、息をのむほどにエキゾチックにしてエレガント。ベゼルにセットされた大粒のダイヤモンド24個(計1.46ct)も、このピースの特別さを引き立てている。
●ピアジェ
TEL0120-73-1874
www.piaget.jp
英国王室の気品を可憐に BACKES & STRAUSS
ロンドンを拠点とする世界最古のダイヤモンドメゾン、バックス&ストラウスから、ヴィクトリア女王が愛したハートをモチーフとする、ロマンチックな世界観の新作が登場。
WGまたはRGケースには、ブリリアントカットの約3倍の時間を要するハートシェイプダイヤモンド36個をセット。「ヴィクトリア コレクション」を象徴する連鎖したハートのモチーフを配したマザーオブパール文字盤のセンターには、ラウンドブリリアントカットダイヤモンド70個、さらに15分ごとの位置にハートシェイプのルビー4個をセット。
リュウズトップにも、ブランドを象徴するアイデアルカットダイヤモンドがあしらわれた。かれんさと気品のハーモニーに酔いしれたい。
●フランク ミュラー ウォッチランド東京
TEL03-3549-1949
backesandstrauss.jp
スイーツとフルーツを盛り合わせた“有終の美” RICHARD MILLE
こんなにも甘美で刺激的な“裏切り”を誰が予想しただろうか? リシャール・ミルと言えば、超絶機構や先進的な素材使いなどにより、タイムピースを別次元へと導いてきたが、今回ブースを飾ったのは、スイーツとフルーツをテーマにしたカラフルな「リシャール・ミル ボンボン コレクション」10モデルだった。
既存の自動巻きモデルをベースに、キャンディー、ケーキ、マシュマロ、フルーツなどのモチーフを、遊び心たっぶりにあしらった。それも、手作業によるアクリルペイントやエナメルなど、クラフツマンシップを駆使した高級時計の文法にのっとったもの。ケースにはカーボンTPT®、クオーツTPT®などリシャール・ミルならではの素材使いを踏襲。
今回を最後に、SIHHを去るリシャール・ミルだが、この“有終の美”には脱帽。
●リシャールミルジャパン
TEL03-5511-1555
www.richardmille.jp
時の哲学、再降臨 FRANCK MULLER
デビュー以来、“時間”に対する哲学的な思惟を具現化した複雑機構で称賛を浴び続けてきたフランク ミュラー。
中でも2003年に「クレイジー アワーズ」が発表されたときの衝撃は、16年の時を経た今も忘れることができない。ランダムに配置された数字を、短針がジャンプして時を表示するかつてないメカニズムには、“時”に対する固定観念から人々を解放しようという、天才時計師ならではの意欲がみなぎっていた。
そんな“時の哲学”を象徴する機構が、新たなるアイコンコレクション「ヴァンガード」に初搭載された。大胆で力強い曲線を描くケースから文字盤に至るまで、ダイヤモンドを敷き詰めたこのバージョンは、日常という時間から離れ、時を楽しむエピキュリアンの腕にこそふさわしい。
●フランク ミュラー ウォッチランド東京
TEL03-3549-1949
franckmuller-japan.com
ブランド創立20周年を祝う垂直トゥールビヨン F.P.JOURNE
現代を代表する独立時計師フランソワ-ポール・ジュルヌが、自身のブランドを立ち上げたのは1999年のことだ。この年、彼は、初期の名機として名高い、トルクを一定に保つルモントワール機構付きの「トゥールビヨン・スヴラン」を発表している。
それから20年。このアニバーサリーを記念するモデルが、「トゥールビヨン・スヴラン・ヴァーティカル」である。一般的なトゥールビヨンとは異なり、ケージを文字盤に対して垂直に設置し、30秒で1回転する高速仕様。ルモントワール機構と、1秒ずつステップ運針するデッドビートセコンド機構も組み込み、精度と安定性を高めた。傘下のダイヤルファクトリーで製作された初のグランフーエナメル文字盤も優美。20周年にふさわしい傑作が誕生した。
●F.P.JOURNE東京ブティック
TEL03-5468-0931
www.fpjourne.co.jp
上品さが際立つパーペチュアルカレンダー PARMIGIANI FLEURIER
1996年のブランド創設時のファーストモデルに再解釈を加えたコレクション、「トリック」。古代ギリシャ建築をインスピレーションソースに、黄金比を用いたフォルムや、モルタージュ装飾のベゼルなどを特徴とするこのコレクションに、パーペチュアルカレンダーモデルが加わった。
8時から4時位置にかけてレトログラードデイトを備え、12時位置にうるう年表示、センターのやや下に曜日と月、6時位置にはアベンチュリンガラス製ディスクの中に南北両半球のムーンフェイズを配置。
ムーンフェイズは、122年間に1日の誤差しか生じない高精度を誇る。上品かつ視認性の高いレイアウトに加え、手彫りギョーシェを施したスレートグレー文字盤も、シックな印象を醸し出している。
●パルミジャーニ・フルリエ
TEL 03-5413-5745
www.parmigiani.com
シンプルさの中に息づく技術的こだわり GREUBEL FORSEY
30度傾斜したダブルトゥールビヨン始め、独創的な超複雑機構を得意としてきたグルーベル フォルセイ。今年はあえてシンプルな機構に絞り、装飾や仕上げなどの美的アプローチを強調した新作「コンテンポラリーテンプ」を発表。
そのラグジュアリーバージョンが、ここに紹介する一本である。高品質のバゲットカットダイヤモンド232個(計9.58ct)をケース、ベゼル、ラグ、リュウズにインビジブルセッティング。時分表示とスモールセコンドのマザーオブパールや、フロステッド仕上げのプレートと相まって、エレガントな表情が印象的だ。
シンプルながら、多階層構造や、独自の形状の大型テンプを採用するなど、グルーベル フォルセイならではの技術的こだわりも見逃せない。
●カミネ
TEL0120-02-7039
www.greubelforsey.com
詩的かつ技巧的なダブルムーンフェイズ HERMÈS
SIHH参加2年目となったエルメスは、極めてユニークなムーンフェイズ機構を搭載した「アルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌ」を発表した。
アベンチュリン製のメインの文字盤(メテオライトバージョンもあり)の12時と6時位置にマザーオブパールの月が配置され、時分表示とデイト表示を兼ねた二つの可動式スモールダイヤルが、59日周期で一周しながら、南北両半球のムーンフェイズを表示する。
ポエティックな表現はもちろん、エルメスが資本参加するヴォーシェ社製のベースキャリバーに、ハイエンドな独創的機構を得意とする時計師ジャン-フランソワ・モジョン氏が率いるクロノード社製モジュールを搭載したムーブメントも、愛好家をうならせるポイントだろう。
●エルメスジャポン
TEL03-3569-3300
www.hermes.jp
腕時計オーナーにスペクタクルな体験を提供 PANERAI
今年のパネライの主役は、ダイバーズウォッチコレクション「サブマーシブル」。その中でも、長きにわたるイタリア海軍とのパートナーシップに捧げられたのが、このミリタリーテイストの一本。
炭素繊維の薄いシートを何層にも重ね、高分子ポリマーとともに高圧圧縮した合成素材、カーボテックをケースとベゼルに採用。軽量かつ強きょう靭じんで、サバイバルツールと呼ぶにふさわしい特性を備えている。
さらに興味深いのが、この時計の購入者33名に、イタリア海軍特殊部隊COMSUBINとのダイビングを含むトレーニング体験が提供されることだ。日本には二本のみ入荷予定。タイムピースとスペクタクルな体験とのパッケージングという、新CEOジャンマルク・ポントルエ氏が打ち出した新機軸に注目したい。
●オフィチーネ パネライ
TEL0120-18-7110
www.panerai.com
スーパースポーツカーの世界観をシェア ROGER DUBUIS
ランボルギーニ・スクアドラ・コルセとピレリとのパートナーシップを継続中のロジェ・デュブイは、ランボルギーニのスーパースポーツカー「ウラカン ペルフォルマンテ」の名を冠した新作を発表した。
12度傾けたテンプを備えた新開発自社製キャリバーRD630を搭載。スピードメーターを思わせるシンメトリックなデザインで、6時位置のデイト表示には、スピードメーターと同じフォントを採用。
オープンダイヤルには、ランボルギーニを象徴するヘキサゴナルスタイルを導入、またエアインテークを着想源とするグリルを配するなど、「ウラカン ペルフォルマンテ」とのデザインリンクが随所に。ストラップには、ピレリのタイヤパターンも採用。モータースポーツマインドを刺激する一本である。
●ロジェ・デュブイ
TEL03-4461-8040
www.rogerdubuis.com/ja/
水のように流れる時とダイヤモンドの競演 HYT
独自のマイクロ液体モジュールによるレトログラード時表示機構をフラッグシップとして、さまざまな表現のモデルを展開してきたHYT。
2019年「カレ・デ・オルロジェ」のHYTのブースには、大型のドーム状サファイアクリスタルを採用した「H0」をベースに、1206個(計7.423ct)のダイヤモンドが、文字盤から側面に流れ落ちるかのように埋め尽くされたモデルが用意された。
サイズの異なるダイヤモンドを敷き詰めるスノーセッティング技法がもたらすナチュラルなきらめきにより、まるでドーム状サファイアに水滴が付着したかのような、他にない外観を実現。ブラックの液体表示も、クールなイメージ。アバンギャルドとラグジュアリーの競演が刺激的だ。
●オールージュ
TEL03-6452-8802
hytwatches.jp