ベントレーで巡る東濃地歌舞伎 BENTLEY

日本で最も“地歌舞伎”が盛んなのが岐阜県である。中でも、長野県と隣接する岐阜県の東部・東濃地方は、芝居小屋の数や保存会の数の多さでも日本一を誇る。今回は、英国車ベントレーで地歌舞伎の芝居小屋を巡り、英国人がこだわって作ったクルマと、岐阜の人たちが熱心に守り続けている伝統文化の親和性を確かめてみたい。

Photo Satoru Seki Text Tatsuya Kushima

日本で最も“地歌舞伎”が盛んなのが岐阜県である。中でも、長野県と隣接する岐阜県の東部・東濃地方は、芝居小屋の数や保存会の数の多さでも日本一を誇る。今回は、英国車ベントレーで地歌舞伎の芝居小屋を巡り、英国人がこだわって作ったクルマと、岐阜の人たちが熱心に守り続けている伝統文化の親和性を確かめてみたい。

明治座
1894(明治 27 )年に地域の人々の手によって建てられた明治座(中津川市加子母)は、当時の姿をとどめている。最新技術を駆使しながらも、クラフツマンシップを持った職人たちが丁寧に作り上げたベントレーは、日本の古き良き伝統建築に似合う。

ベントレーにはコンチネンタルシリーズというのがある。“大陸”という名のモデルだ。現行型は 2004 年に発表されたもので、ベントレー史上最も成功したモデルとして今も“売れ”続けている。だが、その元となるのは 1952 年に販売を開始したRタイプのコンチネンタル。これが初めての“大陸”となる。

そしてその名前は、フランスやスペイン、ドイツを有するヨーロッパを指す。周りを海で囲まれた島とは違う広い大地を意味した。理由はこのクルマがグランドツアラーとして優れているから。どこまでも快適にスピーディーに走れる性能を表現するために彼らはその言葉を用いた。

東濃地方を走るベントレー

そんなベントレーの最新モデル、フライングスパー( 4 ドア)に乗って旅に出た。2013 年にモデルチェンジしたこのクルマは、今までコンチネンタルフライングスパーと名乗っていたが、2 ドアのコンチネンタルGTシリーズと区別するために名称を変更した。グランドツアラーの目的地は岐阜県である。ここには地歌舞伎が今も受け継がれており、特に東濃地方(中津川市・恵那市・瑞浪市)には芝居小屋がいくつも残り、地元の保存会による定期公演が行われている。中でも特徴的な中津川市の明治座と常盤座、瑞浪市の相生おい座を巡り、ちょうど 12 月に定期公演をしている山岡歌舞伎保存会(恵那市)の舞台をのぞいた。

  • 相生座 相生座
    にぎやかなのぼりが立ち並び、“江戸の芝居小屋”の風情が漂う相生座は、下呂町の相生座の外観と、明智町の常盤座の舞台・客席を組み合わせて、1976 年に移築復元された。ベントレーに乗ってタイムスリップしてきたかのようだ。
  • かつら かつら
    かつらの多くが江戸時代のもの。
  • 「先代萩」衣装 「先代萩」衣装
    「先代萩」で政岡が着る素晴らしい衣装が残る。
  • 3色の定式幕 3色の定式幕
    大歌舞伎の舞台でもよく使われている3色の定式幕。
  • 花吹雪などを裏方が散らす場所 花吹雪などを裏方が散らす場所
    今でもここから花吹雪などを裏方が散らす。
  • 相生座
  • かつら
  • 「先代萩」衣装
  • 3色の定式幕
  • 花吹雪などを裏方が散らす場所

ベントレーは、緑深い山から田園エリア、そして芝居小屋まで、実に東濃地方の景色に溶け込みながら気持ちよく走り続けた。現行モデルであっても DNA を受け継ぐデザインの懐の深さ、そして、誕生からのアイデンティティーであるスポーツ性能の高さも、ステータスに見合った優雅な走りも、洗練され進化していると感じる。

  • のどかな田園風景の中に立つ常盤座 のどかな田園風景の中に立つ常盤座
    のどかな田園風景の中に立つ常盤座(中津川市高山)は、1891(明治 24 )年に建築。もともとこの地域では地芝居が盛んで、村々に小屋があったそう。地域の人々の“心”が受け継がれている“農村の大舞台”にベントレーはごく自然になじむ。
  • 看板 看板
    道を 1 本隔てて常磐神社がある。
  • 小道具なども全て地元の人たちの手作り 小道具なども全て地元の人たちの手作り
    小道具なども全て地元の人たちの手作り。
  • 引き幕 引き幕
    岡山大橋完成記念に地元の人々が寄贈した引き幕。
  • 常盤座の奈落 常盤座の奈落
    常盤座の奈落。回り舞台は今でも人力で。
  • のどかな田園風景の中に立つ常盤座
  • 看板
  • 小道具なども全て地元の人たちの手作り
  • 引き幕
  • 常盤座の奈落

付け加えるならドライバーズシートからの視界もそうだ。なめしの効いたレザーとそれを丁寧に縫製するダブルステッチ、目の整ったウッドパネルを視野に入れながら見る、田園風景は実に趣がある。フロントガラス越しの木造建築による芝居小屋はまるで絵画のようだ。これも日・英両国の親和性なのか。そこにはクラフツマンシップとインテリジェンスが共存する。

6L W12+ターボのエンジンはそれを象徴する。最高出力 625 馬力というとてつもないパワーが大きなボディーを瞬時に動かし、まるでレーシングマシーンのごとく目前の景色を後ろへ流す。その時のエキゾーストサウンドもイメージ以上で、DNA に書き込まれた素性を再認識させられる。単なる 4 ドアサルーンではないことを。しかもハンドリングはとてもスムーズでこのサイズをたやすく動かす。

ゆっくり走るときはまた別の顔を見せる。雲のじゅうたんにでも腰を下ろしたような乗り心地で、スーッと静かに走り出す。

全てにおいて“上質”という言葉が頭に浮かぶクルマだ。

Bentley Flying Spur
ボディー:全長5315×全幅1985×全高1490㎜
エンジン:6.0L W型12気筒ツインターボチャージド
最高出力:460kW(625ps)/ 6000 rpm
最大トルク:800Nm(81.6kgm)/ 2000rpm
駆動方式:4WD
トランスミッション:8速AT
価格:22,800,000円
ベントレー コール フリーダイヤル0120-97-7797 www.bentleymotors.jp

※『Nile’s NILE』2014年1月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています

ラグジュアリーとは何か?

ラグジュアリーとは何か?

それを問い直すことが、今、時代と向き合うことと同義語になってきました。今、地球規模での価値観の変容が進んでいます。
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