超高級セダンや超高級スポーツカーがあるなら、超高級SUVがあるべきだ。そんなニーズがいま世界の富裕層のあいだで高まっている。その先鞭をつけるように発売開始されたのがベントレー ベンテイガだ。
英国のベントレーについては、先刻ご承知だろう。1919年に創業され、すぐにレースでの活躍で一躍名を馳せた。50年代からは高性能クーペの名作を送りだし、近年はラグジュリー性とスポーツ性を最も高いレベルで併せもったプロダクトの数々で、ゆるぎない地位を獲得している。
ベントレーが手掛けるレースカーは、速く走るためには軽く小さくという常識を打ち破り、威風堂々たる大型ボディーを特徴とした。そのためジャーナリズムやライバルメーカーらは畏怖の念を込めて「世界一速いトラック」と愛称を与えたのは有名な話だ。
ベンテイガはたんに豪華にするために車体を大きくしているという単純な作りではない。ベントレーの技術者たちが伝統にしたがって、最も高性能なSUVに仕立てあげているのだ。
6リッターW12気筒エンジンは、447kW(608ps)、5250~6000rpmの最高出力と、900Nm、1250~4500rpmの最大トルクを持つ。走らせると期待は裏切られない。力がありあまるほどある。慎重にアクセルペダルを踏まないと頭がのけぞるほどの発進加速だ。アクセルペダルを踏み続けると、どこまでも加速が続いていく感覚に加え、ベントレー・ダイナミックライドという電子制御のエアサスペンションによるボディーコントロール性と正確な操舵で、着座位置が高いスーパースポーツカーというべき希有な運転感覚が堪能できる。
単に速いだけではない。快適性が犠牲になっていないのは特筆すべき点だ。内装の作りはベントレー車と共通で、革とクロームとウッドで構成された室内の作りは芸術品に近い。戦前の高級車のよき世界観がきちんと継承されているといってもいいだろう。
車体色を含めた外装も、それに内装もほとんどすべて特注だ。スーパーフォーミング加工された継ぎ目のないアルミ製フロントフェンダーにヘッドランプは段差もなくはめ込まれた作りのよい車体のために、無数といってもいい、108もの塗色が用意される。
一方、内装ではこのクルマがオフロードでも高い性能を発揮することを意識して(スコットランドに領地を持つロンドンの富裕層のように)、荒れ地で汚れてもいい黒一色のインテリアもいいだろう。逆に自宅や別荘のリビングルームのテイストに合わせた革の手触りや調度とのマッチングを考えるのも楽しそうだ。
ベントレー ベンテイガの価格は2695万円。静止から時速100キロまでをわずか4.1秒と高出力のスポーツカーなみに走り、最高速は時速301キロという。スーパーSUVである。
走る“芸術”は、手に入れる価値がある。
BENTLEY BENTAYGA
ボディー:全長5150×全幅1995×全高1755㎜
エンジン:6ℓ W型12気筒ツインターボTSI
最高出力:447kW(608ps)/5250~6000rpm
最大トルク:900Nm(91.8kgf-m)/1250~4500rpm
駆動方式:AWD
トランスミッション:8速AT
価格:26,950,000円
●ベントレーコール TEL0120-97-7797
※『Nile’s NILE』2017年2月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています