VAN CLEEF & ARPELS
夕まぐれほのかに花の色を見てけさは霞の立ちぞわづらふ
北山の夕まぐれ、療養中の光源氏は、“紫の君”に目を奪われる。この一瞬の出会いで、まだ幼い姫に潜在している“高貴な美しさ”を見いだした。光源氏は“紫の君”を手元に置き、育てることを決意する。数年後の恋に身を捧げたのだ。ヴァン クリーフ & アーペルの“黄金の手”と呼ばれる職人たちは、宝石が本来持つ美しさを最大限に引き出すため、石との瞬間の出合いに心を砕く。あたかも宝石を育むように、巧緻(こうち)を極めた職人の技は、誰もが一瞬にして心奪われる芍薬の花を誕生させるのだ。
ヴァン クリーフ & アーペル ル デスク
TEL0570-00-8202
GRAFF
心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたる夕顔の花
誰とも分からぬまま光源氏がとりこになる女性“夕顔”は、そこに咲いていた夕顔の花を自らに、花をより美しく輝かせる“露”に光源氏を例えた和歌を送った。和歌が書かれた扇にはほのかな香りが残り、書き流されていた歌が匂い立つようであった。二人の恋の始まりである。
グラフのネックレスは、中央のイエローダイヤモンドが“夕顔”の花、それをより美しく引き立てる“露”のようにホワイトダイヤモンドが配されている。実に知的でありながら無邪気なかわいらしさがある、心引かれずにはいられないジュエリーである。
グラフダイヤモンズジャパン
TEL03-6267-0811
TIFFANY & CO.
世語りに人や伝へむたぐひなく憂き身をさめぬ夢になしても
亡き母・桐壺(きりつぼ)の面影を求めて“藤壺”に夢中になる光源氏。“藤壺”は一度だけの出会いと心に秘め、二度と会わない決意をする。
しかし、“藤壺”を見舞いに訪れた光源氏との夢のような逢瀬(おうせ)は恋情に再度火を付ける。現世の“恋”を夢の中に閉じ込めたかのような、妖艶な光を放つティファニーのダイヤモンドたち。この世のものではないかのような輝きを、ダイヤモンド一粒一粒に吹き込むティファニーの卓越した職人技があるからこそだ。どのダイヤモンドからも、うっとりとするような恋模様を連想する。
ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク
TEL0120-488-712
CHANEL
照りもせず曇りもはてぬ春の夜の朧月夜に似るものぞなき
ただ夢のようにぼんやりと見える朧月夜(おぼろづきよ)に、「朧月夜に似るものぞなき」と若々しく麗しい声で歌を詠む姫との偶然の出会い。光源氏は“朧月夜の君”に傾斜していく。そしてお互い名を名乗らないまま、扇だけを交換して別れるのだが……。水面に映る朧月のほのかな光に浮かび上がるがごとき、シャネルのネックレスは、実に艶にして麗しい。光源氏が瞬く間に恋に落ちた、“朧月夜の君”そのものだ。3062粒のダイヤモンドが放つ妖艶な輝き。卓越した技巧の妙である。
シャネル(ファイン ジュエリー)
TEL03-3501-5730
CHAUMET
夕露に紐とく花は玉鉾のたよりに見えしえにこそありけれ
光源氏は“夕顔”に正体がばれないよう顔を隠して通い続ける。しかし、夜な夜な通わずにはいられないほど愛おしく思う“夕顔”を、用意した場所に連れ出す際に光源氏であることを明かす。その告白の時に、英知を象徴し、愛の力が強いといわれるエメラルドは、恋に懊悩する者に覚悟を与える。霧に隠されていた“玉鉾(たまぼこ)”が、力強く輝きだす瞬間である。
ショーメ
TEL03-3613-3188
CHOPARD
うつせみの羽に置く露の木隠れて忍び忍びに濡るる袖かな
自分の思い通りにならない“空蝉(うつせみ)”を落とすため、光源氏は“恋のゲーム”を仕掛ける。二人の知的な恋の駆け引き、心理戦のあやは、恋愛映画のワンシーンを見ているようだ。毎年、ショパールがカンヌ国際映画祭のために制作する「レッドカーペット コレクション」は、開催回数と同じ数のジュエリーを発表。今年は66の全て1点もののユニークピースが披露された。光源氏の情熱と、空蝉のしたたかさをルベライトの赤と黒蝶(くろちょう)パールの黒が見事に表現している。
ショパール ジャパン プレス
TEL03-5524-8922
※『Nile’s NILE』2013年11月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています