この名門ジュエラーの複雑で豊かな歴史は、その名高さとダイヤモンドのきらめきに隠れているのか、実はあまり知られていない。しかしながら、カルティエは装飾美術の歴史において非常に重要な役割を果たしてきた。「王の宝石商」としてのクラシックな作品から幾何学的なデザインとエキゾチックの狭間にある、モダンスタイルの作品に至るまで、カルティエのクリエーションは人々の好みや社会規範の変遷を色濃く反映してきたのだ。
本展では、カルティエのクリエーションを用途とスタイルの変遷に従って展示。カルティエ史上、最も重要な展覧会になるとあって、ジュエリーやオブジェ、ウオッチ、置時計など約600点もの作品が集結した。展示される主なものは「カルティエ コレクション」だが、その他に美術館などの公共機関やメゾンの歴史を象徴する人物たちのプライベートコレクションから貸与された約50の作品も加わった。特にグレース后妃の洗練された趣味をしのぶことができるモナコ皇室コレクションの格調高い約20点の作品に期待が高まった。
160年以上の歴史の中で、いかにカルティエが様々な造形を作り上げてきたのか、そしてその中で追求してきた本質的な美、さらにはジュエリーやアクセサリーが果たしてきた社会的な役割を知ることができる貴重な展覧会となった。この展覧会のためにパリへ飛んでも惜しくはないだろう。
●グランパレ サロン・ドヌール
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