よきものは必ずしも大きさとは比例しない。茶碗や壺など日本美術はその典型だろう。分野は全く異なるが、作りや仕上げである意味同じような存在感を発揮するのがレクサス。例えば、新型レクサスISは美的センスの結晶のように思われる。
先に北京でワールドプレミアを行い、海外でも高い評価を得ている新型レクサスIS。興味深いことに米国ではニア・ラグジュアリーセグメントに位置する。ニア・ラグジュアリーとは中型高級車を指す。大きければより高級という(やや古い)価値観がまだ支配的な市場では、このように呼ばれるということか。
新型レクサスISは、しかし、そんな古い“くびき”を脱している。扱いやすいサイズのボディーゆえの運動性能のよさ。そして先に触れたように日本の陶磁器すら思わせる面と、切れ味するどいラインで構成された車体の見事な美。この二つが合体している。
スポーティーなデザインを追求
これまでレクサスISの購入者から、エクステリアデザインが最も支持されており、今回はそのデザインをさらに昇華させたという。フロント部分の大型エアダムに代表されるアグレッシブともいえるスポーティーなイメージが強調され、ほかのクルマとは一線を画す存在感を発揮している。まさに狙い通りの仕上がりである。
こうして“アグレッシブスポーツ”をテーマに外形デザインを開発したことで、よりストロングでアスレチックに強化された。そして、どこから見ても、一目でISだとよくわかるようになったといえる。実際にアスレチック、つまり運動性能の向上も新型レクサスISの大きな見どころだ。
回転マナーにすぐれスポーツドライビングの気持ちよさを味わわせてくれるガソリンエンジンと、燃費効率を追求しつつ同時に力強い加速も体験できるハイブリッドパワーユニット。この二つが用意されるのは従来と変わらない。
サスペンションの熟成によるさらなるハンドリングの気持ちよさを実感できる操縦性の向上は、そこにさらなる魅力をつけ加える特筆すべきポイントである。
新型の開発で何より大切にしたことは“走る楽しさ”。言い換えると、“運転して気持ちよい”というフィーリングの追求である。これを実現するために、サーキットを含めた世界中の道でテスト走行を繰り返し、新型はその集大成としてスプリングやダンパーなどのチューニングはもちろん、サスペンションシステム全体の軽量化および高剛性化を施している。レーザースクリューウェルディングという溶接技術を使うなどしてボディー剛性を上げるとともに、すぐれた操縦安定性を目指した車両の統合制御技術であるレクサス・ダイナミック・ハンドリングシステムを搭載。ドライビングの楽しさを追求する姿勢はレクサスならでは。
レクサスは乗って気持ちよく、かゆいところに手が届くようなおもてなしのサービスでファンが多いが、クルマとしての完成度ゆえ国際的な評価が高い。ISの次にISを買う。そんなリピーターが多いのも、一つの証左といえるかもしれない。その核になるバリューを作り手が理解し、よりよい形で提供しようとしているのが新型レクサスISだということなのだ。
先進的安全装備の充実も大きな特徴だ。従来はオプションだった予防安全パッケージ「レクサス・セーフティ・システム+」が標準装備となっている。歩行者検知機能付き衝突回避支援「プリクラッシュセーフティ」、車線逸脱による事故の予防に貢献するステアリングホイール振動機能付きレーンディパーチャーアラート、夜間の前方視界確保を支援するロービームとハイビームを自動で切り替えるオートマチックハイビーム、先行車の車速に合わせて速度を調整し一定の車間距離を保ちながら追従走行するレーダークルーズコントロールがその内容だ。
まず、新型レクサスISのハンドルを握って、走らせてみてほしい。そうすれば、レクサスがこだわりぬいた走りを、そしてスポーティーなデザインの真価を感じられるはずである。こうして新型レクサスISは、スポーティーセダンの新しい地平を切り開いていきそうだ。レクサスとのファーストコンタクトとしてもすすめられるモデルである。
LEXUS IS350“F SPORT”
ボディー:全長4680×全幅1810×全高1430㎜
エンジン:3.5ℓ V型6気筒DOHC
最高出力:234kW(318ps)/6400rpm
最大トルク:380N・m(38.7kgf・m)/4800rpm
駆動方式:2WD(FR)
トランスミッション:8速AT
価格:6,303,000円
●レクサスインフォメーションデスク TEL0800-500-5577
※『Nile’s NILE』2016年11月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています