都心から箱根までの道のりをポルシェ カイエンS E-ハイブリッドで静かに、スポーティーに、力強く走りながら、その言葉が意味しているところが端的にわかった。それは持続可能な移動手段という無味無臭の解だけではなく、クルマ本来の楽しみであるパフォーマンスも重視しているということなのだ。
カイエンは余裕ある車体を持つプレミアムSUVである。5人の大人と荷物を積める能力と、あらゆる細部に至るまでの作りのよさと、シャープな印象が強いスタイリングを高く評価されている。加えて、電気モーターの長所を積極的に利用した環境対応車としての特長がある。
実際作りのいいシートに背中をあずけ、パワートレーンのスイッチを入れるとまず、電気モーターだけが始動する。そして外部充電式のプラグインハイブリッドシステムの恩恵により電気モーターだけで36キロもの航続距離を誇る。エンジンが動いても、高速走行などではコースティングといってエンジンとドライブトレーンが切り離される。最小限の燃料しか消費しないアイドリング状態のまま走らせることが可能だ。
エレクトリック走行モードは、単なる省エネのためのシステムではない。ガソリンやディーゼルといった内燃機関と違い、ゼロからいきなり最大トルクを発生する電気モーターの特性を生かし、加速時にも大きな働きをする。エンジンでの走行中アクセルペダルを強く踏み込むことで、スーパーチャージャーを備えた3リッターV型6気筒の力に加え、電気モーターが動いてトルクを上積みするのだ。ブースト機能とポルシェが呼ぶこの機能は異次元の、とつけ加えたくなる力強さである。
ハンドリングはスポーツカーメーカーのポルシェだけあって、安定していながらスポーティーだ。ステアリングホイールの切れ角には敏感に反応する。見事な気持ちよさだ。深く感心するのは、パワーと燃費経済性ともにドライバーに意識させずにクルマが使いわけてくれることだ。高級とはそういうものかもしれない。
カイエンS E-ハイブリッドとどこか近いものを感じさせるといえば、箱根の高級旅館、強羅花壇が思いつく。箱根の景観に溶け込むように建物と自然の美しさをいつまでも維持する努力といい、宿泊客に提供される質の高いサービスといい、従業員みなが高い目的意識を共有していないと難しいだろうと思わせるものだ。こうした目に見えない価値は、世界的に有名なホテルレストラングループ「ルレ・エ・シャトー」のインスペクターがたまたま宿泊した際に、その目にとまり、直接、加盟を誘われたという事実にうなずける。
ポルシェファンに高い満足を与えながら、先進的な環境性能を実現したカイエンSE -ハイブリッドも、この点で共通している。高邁(こうまい)な思想性が一台に凝縮されているからだ。今後も、強羅花壇のような全てにおいて高い質を誇る「ルレ・エ・シャトー」の日本旅館をポルシェのハイブリッドカーでめぐっていきたい。
カイエンS E-ハイブリッド
ボディー:全長4855×全幅1940×全高1710㎜
エンジン:3.0ℓ V型6気筒(4バルブ)スーパーチャージャー
最高出力:245kW(333PS)エンジン+エレクトリックシステム306kW(416PS)
最大トルク:440Nm(3000~5250rpm)エンジン+エレクトリックシステム590Nm(1250~4000rpm)
駆動方式:AWD
トランスミッション:8速ティプトロニックS
価格:11,990,000円
●ポルシェ カスタマーケアセンター TEL0120-846-911
※『Nile’s NILE』2016年10月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています