Mercato
アルキメデスが生まれたシチリア南部にはギリシャ神殿が残り、絵はがきのような美観だが、パレルモの町の方が、奥が深い。名物ピスタチオのジェラート(元祖アイスクリームはアラブからシチリアに伝わったとか)を片手に石畳の道を歩いていると、市場が開かれている広場に出た。
島東部に活火山エトナを控え、農耕の女神ケレスに寵愛(ちょうあい)されたという大地は、アラブの灌漑(かんがい)技術でさらに肥沃に育った。市場に並ぶ新鮮な果実や野菜は宝石のようにあでやかだ。加えて、水揚げされたばかりのようなさまざまな海の幸が並ぶ。
18世紀にはパレルモ市内から豊かな田園に貴族たちがヴィラを建てるようになった。だが、1950年代マフィアの台頭とともに、郊外の乱開発が進んだ。パレルモ市内は手付かずであったが、郊外のヴィラの多くが消滅したと言われている。一方、市内では多くのヴィラが朽ちるがままになった。相続税はないものの、維持費が追い付かないのだろう。
鬱蒼(うっそう)とした荒れ放題の庭園の奥にある半ば廃屋のような豪邸。一方で、今も比較的しっかり存続しているのが、教会だ。パレルモ市内には、頑強な石造りのさまざまな様式の教会が無数にある。意外にも内部がきれいに保たれているのは、マフィアの献金が多いからとも言われる。