創世の神を迎えし聖地 前編から続く
名水が潤す日々の営み
アマミキヨが立ち寄った浜川御嶽の「浜川」が「海のそばの湧き水」という意味であることからもわかるように、このエリアには湧き水が点在する。沖縄特有の琉球石灰岩(サンゴから生まれた岩)の多孔で濾過され、地上に現れる水。沖縄では湧き水の出る場所には神が宿るとされ、大切にされている。
このエリアで最も有名な湧き水は、百名ビーチから北側に連なる高台に登る途中の「垣花樋川(かきのはなひーじゃー)」。周囲には水田が広がり、遠くには海を望むのどかな風景の場所だ。
樋川とは、水が湧く場所から掛樋で水を引いてきた井泉のこと。うっそうと茂った林の中から現れる垣花樋川は水量が豊富で水質も随一。全国名水百選に選ばれている。
垣花樋川からすぐの下流には、透明度の高い水で満ちた水たまりがある。ここは「馬浴用」と呼ばれる、もとは馬が水浴びをしていた場だ。その馬浴用も含め、樋川から流れた水は「下の川」と呼ばれている。樋川の水や下の川の水は、その周りの集落の生活用水として利用されてきた。今でも休日になると、地元の子どもたちが水浴びをして遊ぶ姿が見られるという。
またこの場所には田んぼが開け、稲作も盛んに行われてきた。現在では、清流を生かしたクレソン栽培も行われている。