チェックイン
少し早めに到着したケープタウン駅北側の専用ラウンジでは、すでに大勢のブルートレインの乗客がくつろぎ、スナックと飲み物を楽しんでいた。
チェックインを済ませる。乗車時刻は15時30分、出発時刻は16時。南アフリカを縦断し、北東部に位置する首都の一つプレトリアを目指す、1600km、車内2泊およそ42時間の列車の旅がいよいよ始まる。
南アフリカでは、行政府はプレトリア、司法府はブルームフォンテーン、そして立法府はここケープタウンにそれぞれ置かれている。静かな街並みに春には7万本を超すというジャカランダの紫の花が一斉に咲き誇ることからジャカランダ・シティーとも呼ばれる。プレトリアの正式名称は、2005年に先住のンデベレ族の首長の名にちなんでツワネと改名されたが、ツワネ首都圏の一地域名として存続することになった。
その名のとおり、濃紺の車体に「B」をあしらったエンブレム、19両編成の列車は、定刻にケープタウン駅を離れ、港を左に、テーブルマウンテンを背後にした市庁舎の時計塔や砦跡を右手にして東に向かう。
客室に入りスーツケースを頭上のコンパートメントに収める。大きな荷物は先頭のラゲージ専用車に収納されるので、客室に持ち込むのは2泊分の身の回り品だけですむ。室内の設備をチェックし、落ち着いたところで、ラウンジで一息入れる。他の多くの乗客も思いは同じだったようで、ライブ演奏のサクソフォンの音が流れる席は埋まっていた。