今回の土佐紀行では「竜(龍)」の一字が重要な意味を持つ。
竜は旅のきっかけとなった細田守監督のアニメ『竜とそばかすの姫』に、仮想現実の世界で暴れ回る謎の存在として登場するし、「仁淀(によど)ブルー」を求めての散策は「氵」に「竜」と書く「滝」をめぐる“岩場歩き”。
さらに立ち寄った高知の二つの霊場が清瀧寺(きよたきじ)、青龍寺(しょうりゅうじ)と、その名に「龍」の字を含む。
もちろん渓谷と滝、お寺と竜の組み合わせはめずらしくも何ともない。インドから中国を経て日本に渡来した竜は、簡単に言ってしまえば、古代の人々の「水を神聖視する思い」が生んだ想像上の生き物。信仰の対象であり、仏教との関係も深いからだ。それでも、高知の中でも仁淀川流域が、「竜」を強く感じるポイントであることは確か。旅に神秘の趣を添えてくれる。