沖縄本島の北部の名護は、やんばる(山原)と呼ばれる濃密な樹林と山並みが成す、癒やしの大自然への始まりだ。
西と東に海を望む、小高い丘の上に立つザ・リッツ・カールトン沖縄は、やんばると海の恵みを五感で享受できる、贅沢なロケーション。琉球石灰岩で造られた白壁と赤瓦が、優雅さと格式を感じさせるホテルのたたずまいは、琉球王室の首里城を連想させる。ホテルは緑のビロードのような芝のゴルフコースとトロピカルな花壇に囲まれ、丘のスロープを下ってゆくと、名護湾沿いのゲスト専用ビーチが現れる。
ホテルに一歩入ると磨き込まれた石と優しい木の材質が美しい、洗練された空間に迎えられる。さりげなく沖縄の伝統工芸品や美術品が飾られ、建物の随所にさらさらと流れる水が心身を安らぎへと誘う。
聖なる楽園に招かれたようなくつろぎと開放感。心地良いゲストルームのベランダから、プール越しに、豊かな緑と東シナ海が織り成す鮮やかなパノラマが広がっていた。
うずりん、と呼ばれる沖縄の初夏は、潤い初め、とも記されるらしい。太陽はまだ優しく、樹林の青葉はみずみずしく、海も穏やかな季節だ。
そして、本州より一足早く、プール開きと海開きが行われる。プールサイドに続くライブラリーで見つけた沖縄の写真集を、パラソルの下で眺める。インフィニティプールの映す風景がそこにあった。
ホテル特性のピクニックボックス、リッツニックはこの絵のようなプールサイドでも楽しめる。が、せっかくなら、ホテルの送迎車で丘を下ること約5分、名護湾の白浜の一画を占めるゲスト専用ビーチで。
バスケットの中に詰められた、きらきらと磨かれたカトラリーやワイングラス、シャンパンと香ばしいクラブサンド、熟したフルーツ、英国風のブランケット敷きなどが、優雅なバカンス感を味わわせてくれる。
長いシャンパンランチの後、砂浜になじんだブランケットの上で、うずりんの海風にあやされながら、贅沢な午睡を。このまま東シナ海に沈む夕日を待つのもいいかもしれない。
ホテルには、イタリア人の総料理長監修によるイタリアン、和牛や沖縄名産の豚アグーと地産の新鮮野菜のしゃぶしゃぶ、山海の幸が堪能できる鉄板焼き、多様なメニューをそろえたオールデイダイニングと、3軒のレストランがある。
加えて、海と緑を一望する「ザ・ロビー・ラウンジ」でのアフタヌーンティー。世界各地から取り寄せた茶葉からお好みを選び、季節の花をモチーフにした上品なスイーツとおしゃれなカナッペとともに。
ここで、夕暮れのアペリテフにまったりくつろいでから、イタリアレストラン「ちゅらぬうじ」へ。アルベルト・クツイット総料理長はアドリア海に面したトリエステの出身。イタリアとも共通した本州にはない食材があることに気づき、沖縄の風土を感じさせる琉球イタリア料理を生み出した。
アートのように仕上がった7皿におよぶコースを、それぞれの味わいを引き立てる、吟味されたワインとペアリング。食後のコーヒーにたどり着き、その充足感に、ちゅらぬうじが虹を意味することに納得。つまり、虹を上るような想像を超える食体験への誘い、だから。
ホテルではゲストのためにヨガやスパ、沖縄茶作りなど多様なアクティビティープログラムを提供している。これに周辺での各種スポーツを加えるとアクティブ派には忙しい一日に。
本館とは別棟のスパへもぜひ、足を延ばしたい。月桃、シダ、ハイビスカス……濃密に茂る南洋樹林の小道を歩いて2分ほどだが、深い森に入り込んだような短い旅。心身にやんばるの新鮮なオゾンが満ちてゆく。
スパ棟には、樹林を望むゆったりした屋内プールと温浴施設がある。後者には絹のような水泡風呂などに加え、風化珊瑚タイルの岩盤浴、ひのきのドライサウナ、森林浴に浸れるデイベッドが設けられている。
リラックスした心身に、肌触りの良い貝殻と樹林の香るオイルとの極上トリートメントを。心地良い眠りに誘うという、ナイトヨガのクラスは、やんばるの森に、四肢を癒やされているような充足感。
クラスの後、カートでゴルフコースの横を通って、ホテル棟に送ってもらう。満天の星空、心身が羽のように軽く、沖縄銀河鉄道に乗っている夢へ誘われた。
●ザ・リッツ・カールトン沖縄 TEL0980-43-5555
※『Nile’s NILE』2020年4月号に掲載した記事をWEB用に編集し掲載しています