古都・奈良の地に、星のや9施設目となる「星のや奈良監獄」が誕生する。舞台となるのは、1908(明治41)年に竣工した奈良監獄。明治政府が不平等条約撤廃と司法の近代化を掲げて建設した五大監獄のうち、唯一全貌が現存する貴重な歴史的建造物である。6月25日の開業に先駆け、1月20日から宿泊予約が開始された。
コンセプトは「明けの重要文化財」。本プロジェクトの目的は、重要文化財としての価値を維持しながら、宿泊施設としての快適性を追求する歴史的建造物の動態保存だろう。100年以上にわたりその役割を果たしてきた旧奈良監獄の最大の特徴は、全体の中心に位置する看守所から放射状に舎房が広がるハヴィランド・システム。かつて監視のために設計された機能的な構造は、建築家の東利恵氏により、静寂に守られたプライベートな回廊へと変貌を遂げた。
客室数はわずか48室。かつての独居房を複数つなぎ合わせ、スイートルームへと生まれ変わった空間は、当時の意匠を細部に残しながらも現代の洗練をまとっている。歴史を重ねた重厚なレンガ壁に囲まれた静謐な客室は、外界の喧騒を完全に遮断し、宿泊者に深い思索と休息を促すだろう。
食事は別棟のダイニングで、日本人の感性で昇華させた日本のフランス料理が提供される予定だ。旧奈良監獄の美しい意匠を眺めながら、この土地が紡いできた時間の流れに思いをはせるひとときは、何にも代えがたい贅沢となるに違いない。
また敷地内には、歴史的価値を未来へ継承する「奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート」を併設。当時の状態を残した「保存エリア」、三つの展示棟、カフェとショップを併設した「展示エリア」に分かれている。日帰り利用もできるので、宿泊者以外も訪れることが可能だ。本ミュージアムは「美しき監獄からの問いかけ」をコンセプトに、4月27日には開館予定となっている。
これまで日本の観光開発において、監獄のような「負の歴史」を含む建造物の活用は困難とされてきた。しかし「星のや奈良監獄」は、その重厚な歴史を唯一無二の価値ある宿泊施設へと転換させた。これは日本の文化財活用における新たなスタンダードとなるはずだ。かつて経験したことのない、歴史の深淵に触れる旅を体験することになるだろう。

